文部科学省「「教育指標の国際比較」(平成18年版)について」

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/03/06032718.htm

平成18年3月28日
生涯学習政策局調査企画課

 「教育指標の国際比較」は、日本、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア連邦、中国、韓国等における教育の普及、教育諸条件、教育費等の状況を統計数字によって示したものであり、昭和44年以来、刊行している。
 このたび、「教育指標の国際比較」(平成18年版)を取りまとめた。同資料の構成及び取り扱った指標は次のとおりである。
 平成18年3月28日に国立印刷局から刊行することとしている。

第1部 教育の普及
1 就学前教育の在籍率
2 義務教育後中等教育への進学率
3 義務教育後中等教育の在学率
4 高等教育への進学率
5 高等教育の在学率
6 高等教育在学者の人口千人当たり人数
7 学部学生に対する大学院学生の比率
8 高等教育在学者の専攻分野別構成
9 学位取得者の専攻分野別構成


第2部 教員
10 教員1人当たり児童・生徒数、学生数
11 1学級当たり児童・生徒数
12 1学級当たり本務教員数
13 女子本務教員の比率


第3部 教育費
14 国内総生産GDP)に対する学校教育費の比率
15 一般政府総支出に対する公財政支出学校教育費の比率
16 学校教育費の公私負担区分
17 公財政教育支出における国・地方の負担区分
18 学校教育費の使途別構成
19 学生・生徒1人当たり学校教育費
20 大学の学生納付金
21 政府機関等奨学制度

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解説

 いくつかの指標について、我が国と諸外国の教育状況を国際比較する。

1.義務教育後中等教育への進学率 図1 義務教育後中等教育への進学率
(備考)
○  義務教育後中等教育への進学率は、日本が全日制進学者で94.4パーセント、定時制通信制(本科)及び専修学校(高等課程)への進学者を含めると97.9パーセント(2005年)、アメリカ合衆国89.2パーセント(公立学校における第9学年から第10学年への進級率)(2001年)、イギリス72.3パーセント(フルタイム在学者)(2003年)、フランス88.3パーセント(フルタイム在学者)(2003年)、ドイツ83.7パーセント(全日制普通教育・職業教育学校在学者)(2002年)、韓国99.3パーセント(全日制普通・職業高等学校進学者)(2004年)である。
 
2.高等教育の普及
(1)高等教育への進学率 図2 高等教育への進学率
(備考)
○  高等教育(大学及びその他のすべての高等教育機関・課程)への進学率は、日本が52.3パーセント(通信制放送大学(正規課程)及び専修学校(専門課程)への進学者を含めると77.7パーセント)(2005年)、アメリカ合衆国48.9パーセント(フルタイム学生)(2001年)、イギリス63.1パーセント(フルタイム学生)(2002年)、フランス約41パーセント(2003年)、ドイツ38.4パーセント(2002年)、韓国98.8パーセント(フルタイム学生)(2004年)である。
 イギリスでは、近年急速に進学率が上昇しており、1985年の進学率は22.9パーセント(フルタイム学生)であった。これは、1980年代後半から、高等教育の拡大政策に伴い、入学該当年齢(18歳)の進学者に加え、成人学生(21歳以上)の進学者が急増していることが主な要因とされる。なお、19歳以下でフルタイムの高等教育課程に進学した者を18歳人口で除した2002年の進学率は38.0パーセントである。
 また、フランスでは、1980年代半ばから、バカロレア(大学入学資格)水準に到達する生徒を80パーセントにするという目標を掲げ、後期中等教育以降の拡大政策をとった結果、1990年代に入ってバカロレアの取得率が大幅に上昇し、現在、同一年齢人口の約6割になった。バカロレア取得者は、原則として無選抜で大学に入学でき、大学入学者が急増した。
 
アメリカ合衆国とイギリスでは、パートタイムによる就学者が多い。
 アメリカ合衆国とイギリスでは、パートタイム就学の制度が発達しており、入学該当年齢人口に対するパートタイム進学者の比率は、アメリカ合衆国12.5パーセント(2001年)、イギリス53.5パーセント(2002年)にのぼっている。
[パートタイム:  国により履修方法・内容が相違するものの、学習以外の活動を行いながら就学する形態のことであり、同じ資格・学位を取る場合、修業年限がフルタイムより長くなるのが通常である。このパートタイム制度により、成人学生の就学が容易になっている。]
 
(2) 高等教育在学者の人口千人当たり人数(全高等教育機関) 図3 高等教育在学者の人口千人当たり人数(全高等教育機関
 
○  大学院等を含む全高等教育機関の在学者の人口千人当たり人数は、日本が23.5人(大学・短期大学の聴講生・研究生等、通信制放送大学(正規課程)及び専修学校(専門課程)の在学者を含めると31.6人)(2005年)、アメリカ合衆国33.2人(パートタイム在学者を含めると55.9人)(2001年)、イギリス23.4人(パートタイム在学者を含めると40.0人)(2002年)、フランス36.9人(2003年)、ドイツ23.5人(2002年)、ロシア連邦45.5人(パートタイム在学者を含む。フルタイム在学者のみでは、20人前後と推定)(2003年)、中国9.1人(2003年)、韓国66.9人(放送・通信大学の在学者を含めると73.7人)(2004年)となっている。
 
3.教員1人当たり児童・生徒数(公立) 図4 教員1人当たり児童・生徒数(公立)
 
○  初等学校における我が国の数値は、18.3人(本務教員。養護・栄養教員を含まない。以下同じ)(2005年)であり、アメリカ合衆国18.0人(1998年)、ドイツ16.7人(2003年)よりも多く、イギリス22.0人(2002年)、フランス18.6人(2003年)、中国20.5人(2003年)、韓国27.6人(2004年)よりも少ない。
 中等学校については、我が国は14.4人(中学校15.0人、高等学校13.6人)(2005年)であり、アメリカ合衆国14.2人(1998年)、フランス12.0人(2003年)より多く、イギリス16.4人(2002年)、ドイツ14.7人(2003年)、中国18.9人(2003年)、韓国17.7人(2004年)より少ない。

4.国内総生産GDP)に対する公財政支出学校教育費の比率  図5 国内総生産GDP)に対する公財政支出学校教育費の比率(2002年)

○  国内総生産に対する公財政支出学校教育費(国と地方が学校教育に支出した経費)の比率は、我が国が3.5パーセントであるのに対し、アメリカ合衆国5.3パーセント、イギリス5.0パーセント、フランス5.7パーセント、ドイツ4.4パーセント、韓国4.2パーセントとなっている(いずれも2002年)。
 この要因としては、我が国の国内総生産に対する一般政府総支出(国と地方による公財政支出全体)の比率が低いこと(図7参照)、児童・生徒数の総人口に占める割合が小さいことや、就学前教育、後期中等教育及び高等教育において私立学校の比率が欧米諸国より高いことなどがあげられる。

○  高等教育への公財政支出の対国内総生産比は、日本0.4パーセント、アメリカ合衆国1.2パーセント、イギリス0.8パーセント、フランス1.0パーセント、ドイツ1.0パーセント、韓国0.3パーセントであり(いずれも2002年)、全OECD諸国と比べても我が国の数値は韓国に次いで2番目に低い。
 この要因としては、前述のとおり公財政支出全体が小さいことのほか、我が国の高等教育が私学を中心に普及していることなどが考えられる。これを大学在学者に占める私立大学在学者の比率から見れば、日本が73.5パーセント(2005年)であるのに対し、アメリカ合衆国は35.6パーセント(2001年)であり、フランスやドイツでは私立が極めて少ない。また、イギリスの高等教育機関は、中世以来、大学が伝統的に国王勅許の形で設立されているため、形式面では私立に分類される場合もあるが、運営費の大半を公財政で負担しており、実質的に国立として機能している。
 
5.一般政府総支出に対する公財政支出学校教育費の比率  図6 一般政府総支出に対する公財政支出学校教育費の比率(2002年)

○  国と地方による公財政支出全体(一般政府総支出)に対する学校教育費の比率は、日本10.6パーセント、アメリカ合衆国15.2パーセント、イギリス12.7パーセント、フランス11.0パーセント、ドイツ9.8パーセント、韓国17.0パーセントであり(いずれも2002年)、我が国の数値は低い水準にある。
(注) 「一般政府総支出」は、国民経済計算上の一般政府部門(政府又は政府の代行的性格の強い機関)の総支出で、「中央政府」「地方政府」及び「社会保障基金」の支出の合計(純計)で表される。
OECD加盟国は、2006年現在30か国。
 
図7 国内総生産に対する一般政府総支出の比率(2002年)
 
*本書利用に当たっての留意点
 各国の教育状況は、その国の歴史・社会・文化等の諸条件を背景に独自の展開をみせており、同じ指標として提示された数値であっても、それを単純に比較することができないことも少なくない。さらに統計のとり方により、一つの指標について複数の数値が得られる場合もある。そのため、本書では、各国の教育指標を国別に統計数値の範囲や条件などについて詳細な注釈を付して掲載している。また、各国の教育状況を多面的に捉えることができるよう、参考となるデータを可能な限り並記している。
 利用に当たっては、このような各国の事情にも留意されたい。
 
生涯学習政策局調査企画課)