大学「見学会」花盛り…生き残りへ学生確保競争

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20060714ur02.htm

高校生らが大学を見学する「オープンキャンパス」で、サービス合戦が繰り広げられている。(生活情報部・岡安大地)
 オープンキャンパスは、受験生に自校の雰囲気を味わってもらうことを目的とした見学会や体験入学のことだ。高校生の夏休み中に行われることが多く、1990年代に私立大学を中心に急速に広がった。日本私立学校振興・共済事業団による全国大学・短大調査(463校が対象)では、2002年度ですでに95・7%が実施していた。
 最近は、受験生をオープンキャンパスに呼び込むために、四日市大学三重県)のように交通費を補助(1万5000円〜5000円)したり、武蔵丘短期大学(埼玉県)のように参加者には受験料相当額(3万円)を入学後に払い戻したりするサービスも行っている。東洋大学の白山キャンパス(東京都文京区)では、“都心”をアピールしようと、説明会会場を高層校舎16階に設定している。
 各大学がオープンキャンパスに力を入れるのには理由がある。一つは、少子化の影響で、大学の志願者数と入学者数が同じになる「大学全入時代」が07年度にも到来するからだ。文部科学省の学校基本調査によると、07年度の18歳人口は直近のピークだった1992年度より約75万人減り、約130万人になる。この影響で、大学・短期大学の入学者数を志願者数で割った合格率は100%になると予測されている。
 同事業団によると、昨年度、入学者が定員割れした私立大学は29・5%に上る。萩国際大学山口県)は、深刻な定員割れなどから昨年、民事再生法の適用を申請した。
 もう一つの理由は入試の多様化だ。書類審査や面接などを組み合わせて適性や意欲を総合的に判断する「AO(アドミッション・オフィス=入試事務局)入試」が急速に広がり、大学の中には、オープンキャンパスでAO入試の説明会を開くところもある。大学側が、受験生に「求めている学生像」を示したり、合格のコツを指導したりしている。
 “青田買い”との批判もあるが、大学側にとっては、目的意識の高い学生を集め、大学のブランド力を高めることにもつながるという。
 同省の調査では昨年度、私立大学364校788学部、国公立大学37校100学部がAO入試を取り入れている。
 いずれにしても学生を確保できなければ生き残れないという危機感が、大学側に強まっている。同事業団の調査では、学生募集活動について、オープンキャンパスが「特に効果があった」と考える大学は71・1%(02年度)に上り、97年度の41・8%から大幅に伸びている。同事業団私学経営相談センターの比留間進(ひるますすむ)・経営相談班長は「オープンキャンパス参加者の8〜9割が実際に受験するといわれる。その年の志願者数は、今やオープンキャンパスの集まり具合で決まるといって過言ではない」と話す。
 国立大学もオープンキャンパスを重視するようになった。04年度から独立行政法人化され、大学が経営基盤の安定を求められるようになったことも影響しているようだ。群馬大は昨年から、オープンキャンパスの開催案内の配布地域を広げ、長野、新潟両県内の高校にも配布した。
 大学間の「受験生確保」競争はますます激化し、オープンキャンパスを舞台に様々な動きが加速しそうだ。

 東京都高等学校進路指導協議会の浦部ひとみ事務局長(都立足立高校教諭)の話
 大学内の様子や周辺環境を知るため、高校生たちがオープンキャンパスに参加することは意義がある。ただ、大学の実態とはズレがあることもあり、その場合は、イベントと考えた方がいい。
 受験生が表面的なイメージだけで大学を選ぶと、入学後にミスマッチ(不適合)が生じ、不登校や中途退学につながる恐れがある。最近の高校は、オープンキャンパスに参加する生徒に対し、大学の担当者に学部選択を相談したり、複数の大学を回って比較したりするよう指導している。
 後悔しない大学選びのためには、卒業生を訪ねたり、講義要項を集めたりするなど、受験生が自分で積極的に動くことも大切だ。
(2006年7月14日 読売新聞)