<追う> 「学校裏サイト」書き込みで高1逮捕の背景は

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710030134.html

<追う> 「学校裏サイト」書き込みで高1逮捕の背景は
2007年10月04日
 大阪府警豊中署は8月22日、インターネットの掲示板に自分が通う高校の校長を脅す書き込みをしたとして、府立高1年の男子生徒(15)を脅迫容疑で逮捕した。
少年が書き込んだ「大阪府立高校ちゃんねる」のスレッド
 調べによると、生徒は7月17日、自宅のパソコンを使って掲示板に、校長(59)を名指しして「殺す」と書き込んだ疑い。少年は6月に別の教諭とのトラブルを理由に無期停学処分を受けていた。調べに対し、少年は「停学にされたことが不満だった」と供述したという。【8月23日付大阪版から】
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 「殺す」。一言だけだったが、校長は「強く身の危険を感じた」という。本当に襲われてからでは遅い。2日間悩んだ末、豊中署に届け出た。
 逮捕された少年は「むしゃくしゃしてやっただけ。がーっと勢いでやった」と供述。凶器を準備するなど具体的な行動は起こしていなかった。
 「匿名で『殺す』と名指しされた恐怖感を彼はどこまで認識していたのか」。豊中署の捜査員は語る。約1カ月の集中捜査で少年を割り出した。被害者に与える恐怖感の重みが、異例の逮捕の理由のひとつだという。
 少年が書き込んだのは「大阪府立高校ちゃんねる」。府内の公立高約190校の半数近い約90校の欄がある掲示板で、4年前、在校生やOBらの情報交換の場として開設され、現在1日千人以上が閲覧するとされる。
 少年は「殴る男」「天下の色男」などと自称していた。逮捕の2週間前、周辺に捜査が及んでいることに気付いたのか「俺(おれ)の何がいけないか、教えていただきたく存じます」と評論するそぶりを見せていた。
 同掲示板は事件後、ひぼう中傷を改めて禁じ、警察に通信記録の提供もあり得ると明記した。ただ、閲覧者の事件のとらえ方は様々だ。
 
 (△高の)品格下げるな!!怒
 校長先生…ここ見て自分で通報したんですよね? イタいですよね笑
 
 管理者は次のメッセージを記した。
 
 ちょっとしたいたずらだったと思います。がんばってね。
 
 軽いいたずらだったのか。校長は少年を学校に復帰させ、向き合うことにした。
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 公式サイトとは別に、特定の学校の情報をやり取りする掲示板は「学校裏サイト」とも呼ばれる。「ブス」「キモイ(気持ち悪い)」など個人攻撃が頻発。同級生の住所や名前を掲載したり、自身のヌード写真を見せたりするものもある。検索を重ねるといくつかの裏サイトにたどりつく。
 
 (実名)、君に友達はいません
 (教師名)うつ病だって…自殺しちゃえば?
 誰かあたしをレイプして(携帯電話の番号)
 
 掲示板以外にも、個人開設の「ブログ」、プロフィルを公開して友達を募る「プロフ」などと発信の方法は広がる一方だ。中高生の人気を集めているあるサイトは、開設から約1年半で会員数が700万人を超えた。他人の中傷などをしないよう呼びかけるが、「ページが多く100%防ぐことは難しい」(運営会社)という。
 神戸市で同級生から現金を要求された高校生が自殺した事件では、フットサル同好会の仲間によって開設されたホームページ(HP)が被害生徒への中傷の場になった。
 HPには、モザイクのかかった被害生徒の下半身の写真や生徒を中傷する書き込みのほか、生徒の実名、住所、電話番号、メールアドレスが書き込まれた。中傷の書き込みは、生徒が交際していた少女にも及んだ。
 子供たちが次々と「有害情報」の発信者になっている。警察当局は非行にとどまらず事件の温床になりかねないとみて摘発姿勢を強める。
 ネット上での子供たちの振る舞いをどう見守り、正すのか。「全国webカウンセリング協議会」の安川雅史理事長(41)は「子どもたちはやってはいけないことをしているとの意識が薄い。我々は悪質な書き込みの削除を常に求めている。携帯電話やパソコンは個人の所有物だが、使い方を制限・監視するなど大人が強い姿勢を示すことが重要だ」とする。