もう一冊買った『この世は二人組ではできあがらない』。

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

この世は二人組ではできあがらない (新潮文庫)

勢いで読了。悪くなかった。例によってか、タイトルがいい。出オチすれすれではあるけれど。内容はというと、作者と等身大の78年生まれロストジェネレーション世代の正論家の女子がいて、この人が語り手で、正論を語る。で、彼氏ということになるのか、男子がいて、これがじゃっかんあぶなっかしいけれどそれはそれで魅力というか、すくなくともそれなりの現実味のある男子で、語り手女子はこの男子を主人公というのだけれど、まぁようするにこの二人が付き合うみたいな話だけれど、まぁ正論っていうか、そもそも付き合うって何?とかいうことにもなるわけで、「この世が二人組でできあがっている」みたいなことを(いまだに?)当たり前のようにしてふるまっている人たちって何?みたいな、まぁたとえばフェミニズムを通過した家族論、を通過した若者論、みたいな社会学の授業で言いそうなことを、語り手は、ずっと語っている。それが非常にきっちりしているので好感を持つ。働くとは、とか、とうぜんそういう話にもなるし、たとえば生きていくうえでの自尊心みたいな話にもなる。そういう話を、まぁさほど理屈っぽくなく語って厭味がないのは、語り手女子がちゃんと現実味のある女子だからってのもある。いやまぁ、この語り手女子は、さいしょ小説家志望の大学一年生として登場して、けっきょく文学賞をとってしまうわけなので、そんなの珍しいじゃないか、といえなくもないのだけれど、まぁ少なくとも作者がそうなんだから一名はいるだろう、という言い方もできるし、それよりなんていうかものの考え方のたたずまいがきちんと現実味があるかんじがするんである。ただまぁ、街を歩いているとけっこう声をかけられるような外見的魅力はある、みたいな設定については、ちょっとこれはわたくしが女子でないからわかんないところはある。「ふつう、人並み」という範囲内なのか、多少そのへんアドバンテージのある設定なのか(この小説のテーマ的に、微妙にその辺は関係なくはない気はする)。
時間がぽんぽん飛ぶようなタイプの小説で、なんかあらすじを追っかけてるような感じもするけれど、じつはそういう小説はきらいではないのでかまわない。そういう中に、世相っぽい事柄がぽいぽいとさしはさまれているのも、ようするにもうそういう、ある世代の「自分たち」の考えを語る小説なのだ、という決意のように見えなくもなくて、これもいっそ好感を持つ。