『セブンスコード』『リアル』みた。

『セブンスコード』のほうは、なんかAKBという人が主演だそうで、まぁAKBは辞めたとかよくわからないけれど、映画として公開というよりまずその人のCDのおまけということになるのだとかいうはなしを、以前、噂に聞いて「なんだそりゃ?」と思ったもんだけれど、見てみたら悪くなかった。60分ほどの中篇で、ウラジオストックだかでロケをしていたんだがこれが悪くない。最初のショットがいきなり、ヨーロッパ映画のようであり、赤茶けてくすんでロシア語の文字が掲げてある建造物と街路を、目の覚めるようなブルーの自動車が走り抜けたり、やおらUターンして画面奥から手前にもういちど走ってみせたりするのは、なんかゴダールってかんじでかっこいい。なんか不相応にでかい旅行カートを引きずって車を追ってちょこまか走る小娘だけ日本のテレビドラマっぽい雰囲気だけれど、まぁしばらくはアップにもならないので気にならなくて、車の持ち主の謎の日本人の男も、長身で黒くて重たそうなコートに身を包んでいるかんじはわりかし様になっている。でまぁけっきょく、おはなしは60分という長さいじょうにあっさりと、あっというまに終わった印象があって、まぁ最後の数分は、くだんのAKBという人の歌唱で、つまりこれがCDのおまけであることを思い出させもするわけなのだけれど、それはともあれ、これはなかなかいい、何も難しいことを考えないでVシネの職人のときのようにあっさりと撮ったらやはり黒沢清という人はふつうに上手だった、というかんじ。ちなみに、特典映像のメイキングの中で、このAKBという女がさらっとたしか「プロモーションビデオ」とか言っていて、まぁ映画というつもりではなかったのだろうか、という疑惑もあるわけだけれど、しかしそれはそれとして、黒沢監督がこのAKBを素晴らしい女優だと絶賛していたのも特に共感できなかったのでそれもおいておくとして、やはり本編を見終わったときに流れるクレジットでひときわ目についた秋本某の名前がミソであって、「AKBがKGBになったっていうのどう」みたいなくだらない思い付きがあったかなかったかはともかく、有り余る金力が(どうせ小規模だろうけれど)ロシアロケを実現させたわけであるならば、そういう強欲でありながら金の次には名誉欲が頭をもたげて賞の一つでも取りたいとなったときに監督を選ぶ嗅覚だけは認めざるを得んみたいなプロデューサーを言いくるめてやりたい企画を実現してしまうというのが活動屋の心意気というものではないかと。
『リアル』のほうは、もっとちゃんとした映画で、いわゆる黒沢清してるかんじなのだけれど、やはり重要なのは綾瀬はるかであって、綾瀬はるかというのは映画だろうとテレビドラマだろうと、まさに綾瀬はるかであるときにいちばん魅力的であるわけで、それはつまり、「とっぴょうしもない設定をただ一人信じて、真剣に演じてくれる女子」ということで、三谷幸喜ザ・マジックアワー』がたしかそうだったし、テレビドラマの『鹿男あをによし』がまったくそうだったし、このまえ終わったドラマ『きょうは会社休みます。』もそうだったわけである。そうすると、お話の骨組みはSFだとつごうがいいだろうし、また、コメディということにもなりやすいわけである。で、この作品、SFといえばSF、なのかしら、そしてしかしコメディでは全くなさそうなわけで、どうするどうなる綾瀬はるか、というところが見どころといってよい。