通勤電車で読む『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』。経済学というのは直観に反するものだがこれは刷って配れ説のベーシックインカム入門。

例によってTwitterで見たのか、ベーシックインカム入門で分かりやすいよ的なことだったと思うのだが、読んでみた。内容はまぁ、タイトル通りである。全国民に一人当たり毎月10万円、年120万円をただで配るべしと。そうするとみんなわーいっつってお金を使って経済が回って景気が良くなってめでたしになるよと。月10万というのは微妙な額で、それだけで遊んで暮らすにはちょっと足らない。子どもにも配られるにせよ、たとえば4人家族で月40万、年480万…なんか生活できるじゃんと思いつつ、まぁ、それで仕事をやめちゃうかといえば、やめないでリッチな暮らしをしたい人がおおいであろう、結果、仕事を離れる人は数%にとどまる見込み、なので、今の労働社会は基本的にそのまま続くよ、でもブラック労働とか理不尽な労働はなくなるだろう(生活のために我慢してしがみつかなくなるので)、めでたし、という計算らしい。で、でもお高いんでしょう?財源をどうするのか?そのぶん社会保障をカットしたりするんでしょ? いえいえ、そもそも財源を考えるなどという考え方がまちがっているのですと。国は個人の家計とは違うんだから、収支のつじつまを合わせるとか考える必要はそもそもないのです、たんにじゃんじゃんお金を印刷して配ればいいのですと。
なんかキツネにつままれたようである。
経済学というのは、いろいろと直観に反することを言うので、昔からわからないなーと思っているわけで、だからまぁこういう入門書を、まぁあまり信じ込まないようにしつつ、いろいろ覗いてみて頭の練習をするってのもある。
ところでいま、株価が上がっている。実体経済がボロボロなのになんでやねんというところだが、マネーの行き場がなくて株に流れ込んでる的なことだと理解している。国は経済対策をそれなりに一生懸命やってるわけで、じゃぶじゃぶとマネーを使って、なんかごじゃごじゃっとして結果はやいはなしが株を買い支えている。そうすると、株を買っても損しなさそうなのでわれもわれもでマネーが株に流れ込んで株価が上がって見た目景気が良くなる。株価が上がると儲けてる人がいるのだろう、あるいは企業が儲かっているのだろう。じゃあ儲かった企業が社員の給料を上げるかというと、上げない。そうすると一般の国民にはお金が全然回ってこない。潤わないので消費しなくて、実体経済はもっとボロボロになる。みたいな筋書きがまぁ、あったとする。そうすると、縮めていえば、国はマネーをじゃぶじゃぶ配っている、ただしその配り先が企業や株主ってことになってるよ、そうすると国民生活には届かないぐあいになってるよね、あげくに増税とかいってさらに市中からマネーを吸い上げたりするもんだから、そりゃデフレにならざるを得んよねと。なので、国がマネーをじゃぶじゃぶ配る先を、直接に国民ひとりひとりにしちゃえば、経済全体が大きく回るよね、と。ふーむ、直観的に手が届きそうなやりかたで再構成してみたら少しわかるかな? でもまぁ、なんかやはりキツネにつままれたような。
著者の人は、ひとり毎月10万、年に120万の給付をしてもハイパーインフレにならないし、そもそもアベノミクスとか言ってインフレターゲット2%とか言ってたのにぜんぜん実現できなかったくせにハイパーインフレとか生意気な心配をするなよということを、いろいろとシミュレーションした結果にもとづいて主張してる。そのシミュレーションの中身が合ってるのかどうなのか心配にならんでもない。なにせ経済学というのは直観に反することを言う人たちどうしで争ってるので、すぐさまどちらを信用しようという気にはなりにくい。
「お金配るおじさん」前澤氏の、100万円配るやつに、著者の人が噛んでたらしい。あれはベーシックインカムの社会実験だったのだということで、当たった人(と当たらなかった人)への追跡アンケート調査なんかもしつつぼちぼち結果的なものも見えてきてるらしい(コロナになったので、実験どころじゃなくなったというのもあるようなのだけれど)。ふーん、と思いつつ、なんかそういうのも、いまいちほんまかいなという感じが抜けないところであるね。

いや、だから単純に、お金ってそんなに勝手にじゃんじゃん印刷しちゃっていいのか?って思うわけですよねやはり。ていうのはつまり、そもそもお金って何?ってことですね。帰り道にずっと、お金って何?ということを直感的にわかるための寓話みたいのを考えてた。