「幸福度」のアンケート調査。授業に使えそう。/大竹文雄『日本の不平等』

なんか、産経新聞にでてたらしい。「特ダネ」の立ちトークでいってた。
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/rcbe/gyoseki/fukou.pdf
「なぜあなたは不幸なのか」筒井義郎、大竹文雄、池田新介(大阪大学社会経済研究所)

要約
本稿は、日本で行った大規模アンケート調査の結果を使って、幸福度がどのような変数で決まっているかを検討する。まず、性別、年齢、学歴、職業などの基本属性、所得・資産の経済変数、選好パラメータとの関係、喫煙・飲酒習慣などとの関係、居住地域によって幸福度がどう違うかなどを検討し、つづいて、これらの変数を用いた回帰分析を行った。本稿が得た主要な結果は、①男性は平均的には女性より不幸であるが、喫煙習慣をコントロールすると有意に不幸であるとはいえない、②年齢が高いほど不幸である、③所得が大きいほど幸福であるが、その増加は逓減的であり、高い所得階層では飽和が観察される、④パートで働いている主婦は無職の主婦より不幸であり、労働が負効用をもたらす、⑤時間割引率が高い人ほど、また、危険回避的な人ほど不幸である。

おいおい、辛気臭い論文だな。新聞では、誰が幸福か、という感じで記事にしてたみたい。そっちのがキャッチーでしょう?とおもうのだけど、こっちのがキャッチーなのかね?

学歴社会論の授業で、幸福度の数値化したやつがあれば、学歴との相関が取れれば、その次元でも学歴社会かどうかを見れるね、という話をしているのだけれど、こういうデータがポピュラーになると、話がしやすい。まぁ、ちゃんと読んでみないと、このての調査って穴があったりしそうでもあるのだけれど。

おっとっと、この論文の著者のひとりが、↓この本の著者だ。ちょうどきのう学生が読みたがっていたんである。研究室に入れていたかしらん。

日本の不平等

日本の不平等


もうひとりの著者のHP内にある、「くらしの好みと満足度についてのアンケート」というのも、関連なのかな?アメリカでの調査なんかも含まれている。
http://w3iser.iser.osaka-u.ac.jp/~tsutsui/anket/kurashikyo.html

はい、yahoo!ニュースが捕捉しました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051118-00000000-san-soci

最も幸せな日本人像は 30代、都会暮らし、専業主婦
 
高齢者ほど「不幸」 阪大教授ら概念数値化
 男性よりも女性、高齢層よりも若年層のほうが幸せを感じているが、所得の高さと幸せは必ずしも比例しない−。大阪大学社会経済学研究所が全国の六千人を対象に行ったアンケートで、日本人の考えるこんな「幸福感」が浮かび上がった。「幸せ」というあいまいな概念を経済学的、社会学的な観点から数値化した極めて珍しい研究結果。調査データをもとに「日本で最も幸せな人物像」も浮かび上がらせており、同研究所では「一部のデータは国民の幸福を追求する政策にも生かせるのでは」としている。さて、あなたは今、幸せですか?
 調査は、同研究所の筒井義郎教授(経済学)らが昨年二月から、無作為に選んだ全国の二十−六十五歳までの六千人を対象に実施。訪問してアンケートを配布、回収する方法で約四千二百人(70・4%)から回答があった。
 アンケートでは、幸福感について、「非常に幸福」を十点、「非常に不幸」を〇点として、「あなたは何点になると思うか」という「幸福度」をたずねた。この結果、五点が最も多く25%。続いて七点が20%、八点が18%、十点も5・5%おり、全体としては幸福と考えている人が多いことが分かった。一方で、四点以下は13%にとどまった。
 この結果を約三十項目にわたって分析したところ、性別では、女性の「幸福度」の平均値が六・五一点に対し、男性は六・二七点で、女性の方がより幸せと考えている人が多かった。
 年齢別では三十代(平均値六・六点)が最も高く、次に二十代(六・四)が続いたが、四十代以降は加齢とともに不幸になり、六十代では六・二点に落ち込んだ。この結果は、海外の大学が行った調査と比べると逆の現象。アメリカやイギリス、ドイツでは三十歳代が最低で加齢とともに幸福度が増しており、若者に甘く高齢者に厳しい日本社会の傾向を表したともいえる。
 職業別では学生(六・九)▽管理職(六・八)▽専門技術職(六・七)▽事務職(六・五)−などの順。主婦も高かったが、専業主婦(六・七)とパート主婦(六・一)で差が開いた。
 学歴では、高学歴になるほど数値が上がっていたが、大学文系卒(六・九)に比べ、大学理系卒(六・八)はやや低く、短大卒とほぼ同じ。サンプル数は少なかったが、小中学校卒(五・七)と大学院修了(七・一)では一・四点の差が出た。一方で、所得(世帯全体)をめぐっては年収千五百万円までは所得が上がるにつれて幸福度も上昇したが、千七百万円以上になると逆に低下するという皮肉な結果も出た。
 居住地域では、政令都市などの大規模都市になるほど上がり、特に近畿と関東が高かった。これは、都市部のほうが高所得者が多いことに加え、利便性なども背景にあるとみられる。ノルウェーでは都市部と田舎での幸福度は変わらないという報告もあるという。
 また、非喫煙者と喫煙者では非喫煙者、ギャンブルをする人としない人では、しない人のほうが幸福度が高かったが、飲酒習慣で比べると大差はなかった。宗教心のある人とない人では、ある人のほうが、他人の生活水準が気になる人と気にならない人では、気にならない人のほうが高いという結果も出た。
 筒井教授は「何をもって『幸せ』と考えるかは人それぞれ。ただ、そうした主観的な幸福感を調べ、経済学に取り入れることで、机上の経済理論が現実社会により近づけるのではないか」と話している。
産経新聞) - 11月18日3時29分更新

学歴社会論の上記のくだりでつかえそうなのは、

学歴では、高学歴になるほど数値が上がっていたが、大学文系卒(六・九)に比べ、大学理系卒(六・八)はやや低く、短大卒とほぼ同じ。サンプル数は少なかったが、小中学校卒(五・七)と大学院修了(七・一)では一・四点の差が出た。

が直接該当するな。これと、他の要素とをくらべながら、
学歴という要因の効き具合が大きいのか?小さいのか?とか訊ねてみると面白いかも。