井上義和「日本型「第一世代問題」の分析視角」

事務室で定期購読しているらしく、コピー機の横に置いてあるのでときどきチラ見する。
高等教育論の雑誌なので、だいたい身につまされる話題だし、知り合いも書いていて、いろんな意味で、おもしろい。
で、最近見たのでいくと、短いけれどシンプルで面白い
http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/QuotDisp?USELANG=jp&DOCID=40007421214&DispFlg=2
井上義和「日本型「第一世代問題」の分析視角」『IDE』(483),76〜80,2006/8・9(ISSN 03890511)

両親が両方とも非大卒のばあい、子どもがその家系ではじめての大学進学者、ということで、これを「第一世代」の学生、と呼ぶのだそうです。
ところで、子どもの学歴・学力は親の学歴・学力と相関が高いので、親が大卒の子にくらべて「第一世代」の子は、不利、ということになる。
げんにアメリカでは、第一世代の学生さんたちの学力問題が、人種や階層といった他のマイノリティの学力問題と並んで(ていうか重なってるんやろけど)重視されておるのだ、と。
で、日本ではどうですか、という。
で、
調査をしてみると、どうやらちょっと面白い結果がでている、と。

日本では、平均値を取ると、第一世代学生の学力が親大卒学生の学力に較べて低いという結果は出ない。
しかし、成績上位層と下位層、あるいは学校適応層と不適応層、で分けて見ると、
第一世代学生の場合、高校時代の上位と下位の格差、適応層と不適応層の格差、が、大学に入っていっそう拡大される、というの。
つまり、両者を平均すると全体としては「第一世代問題」は見えなくなるけれど、じつは、あるのだ、という。
いっぽう、親大卒学生たちは、高校の成績や学校適応度の差異が、大学に入ってから消えていく、
つまり、ひとことでいえば、てきとうにうまいことやっていくんや、ということですね。
第一世代は、がり勉はよりがり勉に、おちこぼれはよりおちこぼれに、なるんや、という筋書き。
みにつまされますね。