竹内『声が生まれる』学生にすすめる竹内本をこれにするかいなか。

声が生まれる―聞く力・話す力 (中公新書)

声が生まれる―聞く力・話す力 (中公新書)

学生に薦める新書本を物色している。で、竹内敏晴はぜひ薦めたくて、さしあたり『日本語のレッスン』をリストに入れていたのだけれど、なんだか品薄になってきた気配がある。そうこうするうちに、新刊が出たので、読んでみた。
自伝的なものと独特のことば論と声のレッスンの話とをまとめた、竹内敏晴の一冊目にちょうどいい本、でもあると思ったのだけれど、でも、意外と、自伝的な部分での旧制の中学の話とか60年代の新劇の話とか、いまの学生さんは素でピンと来ない恐れがある気がする。デカンショ節、などというものを、自分はなぜかまだ耳にしたことがあるのだけれど、いまの学生さんたちは、デカンショ節というものが文章の中に出てきたとしてそれがどんな歌だったかが響かないだろうし、デカルト・カント・ショーペンハウエルなどといわれてもなおいっそうハァ?という顔をするだろうし、また、新劇、という呼び方そのものがなくなっているかもしれない。ちなみに私は学生時代に雑誌『新劇』ちうのを何冊か持っていて、学生時代に古本屋でバックナンバーを買ったのである。唐十郎とか生田萬とかのシナリオめあてに。なので、これもなぜかかすかにピンと来るものはなくはないつもりである。でも今の学生さんはねえ。
なので、やはりいっそたとえば声のレッスンの話を中心にそれだけで一冊、というほうが、入りやすいかなあ、という気もするんである。