教育3法案にかんする社説三連発。

全大教近畿」のサイトは教育ニュースがまとめてあって便利にチェックしている。
http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/index.htm
そこででてきた社説三連発。

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007051802017012.html
【社説】
教育3法案 管理への懸念拭えない
2007年5月18日
 教育の行方を左右する教育三法案が衆院特別委員会で可決されたが、国による管理強化への懸念が拭(ぬぐ)えていない。これで教育現場を活性化させられるだろうか。さらなる議論が必要だ。
 政府・与党は三法案を最重要法案と位置づけ、教育再生特別委で審議を行った。民主党も一部対案を出していたが、政府案が与党の賛成多数で可決された。審議には昨秋の教育基本法の五十五時間を上回る時間をかけたものの、教育への管理統制をめぐる疑問は解消されていない。
 学校現場への影響が大きいのが、学校教育法の改正だ。教育基本法の改定を受けて、義務教育の目標に「規範意識」や「公共の精神」「我が国と郷土を愛する態度」などが盛り込まれる。
 審議では憲法で保障する思想・良心の自由を侵さないかとの再三の追及に対して、政府側は「態度などを養うことは、国による特定の価値観の押しつけではない」との答弁を繰り返し平行線だった。
 教育学者の中には内心の自由に踏み込まないと法案に明記するよう求める意見さえある。法改正されれば学習指導要領が修正され、授業での教え方や評価の仕方が変わろう。どのように変わるのか、親や教師の心配に対して具体的な答えを出すべきだろう。
 また地方教育行政法の改正案では安倍晋三首相は「教育委員会が自浄能力を発揮せず、十分な責任が果たせない場合に国が関与を行う」との答弁に終始し、文部科学相による教育委員会への関与強化が教育の地方自治地方分権に逆行するものではないかとの疑問は消えない。
 生徒などの教育を受ける権利が侵害された場合に文科相が教委に是正要求を行うとしているが、これは文科省の都合で解釈される曖昧(あいまい)さがある。国の関与強化が現実の問題解決につながるのか明確ではない。
 教育職員免許法の改正により教員免許は終身制から十年ごとの更新制へと大きく変わる。首相は「教師の知識や技術の刷新に必要」と説明したが、十年に一回だけの三十時間の講習で教師の資質向上につながるのかとの野党の指摘はもっともだ。
 年平均約三十億円という莫大(ばくだい)な講習費用を教師本人も負担するのか。負担するとすればどこまでか。国や教委の負担も煮詰まっていない。
 首相は答弁で「政府案は現状より十歩進んだ内容だ」と自負しているが、管理や統制により現場を委縮させるようなら、教育再生とは言いがたい。

はいおつぎ。

朝日新聞
http://www.asahi.com/paper/editorial20070519.html
教育3法案―疑問がいっそう膨らんだ
 安倍首相が力を入れている教育改革の関連3法案が、衆院を通過した。昨年の教育基本法改正に続く第2弾である。
 それにしても、随分と急ぎ足ではないか。通常は1年程度かける中央教育審議会の答申も、わずか1カ月でまとめさせた。「突貫工事は手抜きになる危険がある」との批判が、審議会の委員から上がったのも当然だろう。
 私たちはこれまで社説で、3法案が本当に教育の再生につながるのか、論議を尽くしてほしいと書いた。いずれの法案も地方分権に逆行し、国の権限と管理を強めようとする色彩が濃いからだ。
 ・地方自治体の教育委員会に指示をしたり、是正を要求したりする権限を文部科学相に与える。
 ・教員免許の有効期限を10年に限り、更新するには講習を条件とする。
 ・義務教育の目標に「愛国心」を養うことを盛り込む。
 ・学校に副校長や主幹教諭らを置く。
 それらが法案の内容だが、約60時間の審議で見えてきた疑問がいくつかある。
 教育委員会への指示や是正要求を盛り込んだのは、そもそも、いじめ自殺と必修科目の未履修問題がきっかけだった。こうした問題で教育委員会がきちんと対応しなかった場合に発動する。政府はそう説明してきた。
 法案では、指示や是正は、子どもの命が脅かされたり、教育を受ける権利が侵害されたりした場合に限られている。
 ところが、伊吹文科相は答弁の中で、学校が卒業式などで国旗を掲揚せず、国歌も斉唱しなかった場合などを新たに介入する対象として挙げた。
 文科相から見れば、子どもの教育を受ける権利が侵害された場合にあたるということかもしれないが、これでは際限なく国が口をはさむことにならないか。法案が出されたときに私たちが示した心配が、現実のものになってきた。
 教員免許を更新するときに、どんな講習をさせるのか。その内容は法律の成立後に省令などで定めるとして、明らかにされなかった。講習の内容によっては、思想や信条で教師を選別することにならないか。その不安が消えない。
 そもそも、10年ごとの講習にどれだけ意味があるのか疑問だ。現在の研修を充実させる方が効果的ではないか。
 免許の更新制は、指導力に欠ける教師を除く仕組みとしてもそれほど役には立たない。すでに各地の教育委員会にある判定機関をもっと活用した方がいい。
 副校長や主幹教諭らを置くことで、学校に会社のような「中間管理職」が生まれる。「教員同士の和」に乱れが生じるのではないか。そんな声が現場の校長から上がるのももっともだろう。
 教育現場がこのままでいいとは誰も思っていないだろう。だが、だからといって、この法案で学校がよくなるとは思えない。参院では、子どもたちのことを考え、きちんと論議をしてもらいたい。

はいおつぎ。

毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20070522k0000m070156000c.html
社説:教育3法改正 問題の掘り下げが足りない
 教育改革関連3法案(学校教育法、地方教育行政法、教員免許法の各改正案)の国会審議が参議院に舞台を移した。これまでのペースでいけば今国会で成立する見通しで、7月の参院選挙で安倍晋三政権の「成果」として掲げられることになる。
 将来を託す人づくりにかかわる法案審議なのに、教育現場にどのような変化をもたらし、何を目的にそれを推進するのか、具体的な提示や議論があまりに乏しい。
 改正案では、義務教育の目標として「国や郷土を愛する」「規範意識や公共の精神」などを明記し、昨年成立した改正教育基本法を裏づける。学校運営に関しては副校長、主幹教諭などの管理・指導的ポストを創設。教員免許を10年の更新制にし、その度に30時間の講習を義務づける。
 そして教育委員会に対しては、児童生徒に緊急な保護を要する事態や教育を受ける権利の侵害がある場合に、文部科学相が指示や是正要求の権限を持つ−−。
 免許更新制や教育委員会への国の権限については、教員不祥事やいじめ、高校の大量履修漏れなど現実に相次いだ問題が推進論の「追い風」になった。
 では、それによって何がどう変わるのか。あるいは、どういう場合が想定の事態にあてはまるのか。これまで政府はまだ十分具体的に示し得たとはいえない。
 不祥事やいじめ、受験準備で科目履修をごまかすことは、現行法令や制度に不備があって起きたわけではない。不適格教員のチェック機能は制度上あるし、学校運営に管理職的なポストを増やすことにどれだけ効果があるかにも現場には疑問の声が少なくない。
 また、履修漏れは全国の主だった教委にキャリア官僚を配置する文科省が「まったく関知しなかった」といえるはずはなく、教委をにらむことによって解決するような浅い問題ではない。
 現行制度で対応や防止ができることなのに、なぜこう次々と問題が起きたのか。社会の価値観や風潮の変化なども踏まえた入念な検証と、そこから得る貴重な教訓や情報を全国の教育現場が共有、活用できるようにすべきだろう。
 それを十分しないまま新たなかたち(法)を先行させるのは、無用な不信や反発を生じ、本末転倒になりかねない。政府の教育再生会議や財界も含めた一連の教育改革論議全般にもいえることだ。
 参院では、もっと現実に照らし、具体的な想定を示したうえでの審議を望みたい。例えば、教員免許更新は子供の教育にそぐわない教員のチェックや是正にも有効といわれるが、講習では何をやり、どう効果を上げるのか。教委への権限発動についても「最小限にとどめたい」というだけでなく、拡大されないようどう歯止めをかけるか。省令や運用によってというのではなく、細かに想定ケースを挙げ、論議を深めてほしい。
 事は教育だ。いうまでもないが、「成果」として選挙のショーウインドーに飾るために法改正するのではないはずだ。
毎日新聞 2007年5月22日 0時06分

毎日さんではこういう記事も。

http://www.mainichi-msn.co.jp/chihou/osaka/archive/news/2007/05/20/20070520ddlk27040161000c.html
Watch!:教育関連3法案、衆院通過 時代に逆行、広がる懸念 /大阪
 ◇教員の萎縮、志願者減、序列化…子どもの“今”直視して
 「教育現場がますます混乱する」。教育関連3法案が18日に衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。約5万人の教員がいる府内では、教員免許更新制度の導入などに対する懸念が広がっている。一方で、いじめなどの問題に関し、「教育委員会は迅速に対応できていない」との指摘も。関係者は3法案をどう受け止めているのか。教諭、保護者、府教委に聞いた。【大場弘行】
 ◇教諭
 「校長や教頭のいる前で、僕の授業の批判はせんといて」
 堺市内の府立高校の男性教諭(48)は最近、同僚にこう詰め寄られた。同僚は、今年度から本格導入された勤務評価制度を気にしていた。校長の評価で教員の給与や昇進に差が生じるからだ。男性教諭は「職員室で授業を批評し合ってこそ健全だと思うが、免許更新制度などが導入されたら現場はますます萎縮(いしゅく)してしまう」とぼやく。
 府教委は副校長などの“管理職”を先行配置しているが、府東部の府立高校の女性教諭(54)は「教員の序列化が進み、教員は校長の顔色を、校長は教委の顔色をうかがう。職員会議でも発言しづらい」と表情を曇らせる。
 ◇教育委員会
 綛(かせ)山哲男教育長は17日の記者会見で、文部科学相が教委に指示や是正を要求できると規定した地方教育行政法改正案について「地方分権の時代に逆行し残念」と不快感を示した。府教委は免許更新制度導入に向けた準備を進めているが、ある幹部は「30時間ぐらいの講習で問題教員を判別できるはずがない」と批判する。
 大阪教育大の今年度入試で、教員養成課程の志願者数は3年前より600人近く少なかった。全国的に教員を目指す若者は減少傾向。同大は「問題が起こると学校と教員の責任にされ、世間からたたかれる。忙しさは増し、教師という職が敬遠される風潮がある」と危機感を募らせる。
 ◇保護者
 八尾市の女性(39)は3月、安倍晋三首相と伊吹文明文科相あてに、府と市教委への指導を求める手紙を出した。中学3年だった長女へのいじめを学校が放置し、長女が1年近く不登校になっているのに、教委が十分な指導をしていない、と訴えた。
 文科省は府教委に手紙が来たことを連絡しただけで指導はしなかった。同省担当者は「大臣はすべての手紙を読めないため、統計にまとめて報告する。こうした事案は法成立後も指示や是正要求の対象にならないだろう」と述べた。
 返事が来ないため、女性はインターネットのブログなどで学校や市教委の対応を告発。「法改正だけでは期待できない。子どもが生きづらい現実を直視して」と訴える。
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 ◇教育関連3法案の柱
 ◆学校教育法改正案
 義務教育の目標に「我が国と郷土を愛する態度」を盛り込み、副校長や主幹などを創設。
 ◆地方教育行政法改正案
 教育委員会に対する国の指示・是正要求権を新設。
 ◆教員免許法改正案
 教員免許の有効期間を10年とし、免許更新制を導入。
毎日新聞 2007年5月20日

ちなみに、この記事シリーズのタイトルを全大教近畿さんは「Watchi!」と書いていて、さいしょなんのことかわかんなかったです。