「教員養成課程の6年制」の行方、中教審教員資質向上部会

http://www.asahi.com/edu/university/toretate/TKY201105110312.html

「教員養成課程の6年制」の行方、中教審教員資質向上部会2011年5月11日
 
 東日本大震災の影響で、どの役所もさまざまな仕事を一時中断して、震災対策に力を注いできた。文部科学省も同様だったが、5月10日、この1年、議論してきた教員の資質向上策を検討してきた部会が5カ月ぶりに再開された。

 おさらいすると、民主党マニフェストに盛り込んだ政策「教員養成課程の6年制」を受けて、文部科学省が昨年6月に中央教育審議会に教員資質向上特別部会を設け、議論を続けてきた。昨年末には、審議経過報告をまとめ、公表した。

内容は、教員の免許を「基礎免許状」「一般免許状」「専門免許状」(いずれも仮称)の3段階にしたうえで、採用後に必要な課程を大学などで修了すれば一般免許を与え、さらに専門性を高めれば、専門免許を与えるというものだ。これらの専門性を高めるため講義を受ける場を教職大学院とすることや、管理職への登用は専門免許が前提になる可能性が高いことも報告に盛り込まれている。さらに、10年ごとに講習を受けて免許を更新しなければ免許が失効する現行の「免許更新制」はやめて3段階の免許制度に吸収されることも示唆されている。

 今回の部会では、審議経過報告を受けて、この部会のもとに、ワーキング・グループを設けて、法案化に向けて制度の骨格を検討することになった。久しぶりの部会となり、委員からはさまざまな意見が出たが、東日本大震災と教員の資質との関係性に言及する委員もいた。

 主な意見を紹介する。

 「すでにこれまでの議論で免許制度の合意が得られたと思っている。どの国会でどう通すのか示して欲しい。ワーキング・グループで具体的にもんで、法改正の日取りを決めてほしい」「東日本大震災で、改めて教員が子どもの命を預かっていると思った。どのような支援ができるのか、研修などいまの問題と関連性を出した議論をすべき」「自分から人に働きかける人間を育てて欲しい。スピード感をもって取り組まなければならない」「一般の大学に情報を出して意見を集約してほしい」

 審議経過報告を出すのに時間がかかったことの反動か、早く制度の骨格をつくるべきだという委員が少なくなかった。

 部会に配られた資料のなかには、いまの免許更新制の調査結果もあった。

 それによると、最初に免許更新の対象になった教員は9万1906人。2年間の期限までに更新に必要な申請をした人は9万1389人(99・44%)。申請をしなかった人は517人で、このうち490人が退職を予定している人で、それ以外の人が27人いた。結局、今年3月31日で免許失効が見込まれる人が27人出たということになる。これはかなり少ないとも言えるし、再三の制度の周知にもかかわらず一定の人数が出ているのでそれなりに出ているとも言えるかもしれない。

 一方、免許更新に必要な大学などの講習について、受講者はどう評価しているのかも公表された。おおざっぱにいって、「よい」「だいたいよい」という評価が9割を超えている。1割弱が評価していなかった。しかし、今回の部会でも出ていたように、講習の内容の評価結果を見て安心するよりも、むしろ比率は少ないものの「なぜ評価されなかったか」という内容の方が重要だと思われる。その意味では、調査結果はあまり参考にはならないといえるだろう。

 今回の部会は久しぶりの顔合わせという印象が強い。一方で、うかがえたのは、教員免許の改革を本格的に進める文科省の意欲だった。ただ、委員はかなり早く制度の骨格を固めるべきだという強い意見があったが、この問題は教員の免許はもちろんキャリア設計、教員の仕事そのものと深く関わっている。自治体の採用、研修、教員の需給バランスというそれぞれの地域の特色とも影響し合っている。拙速だけは避けるべきだと望みたい。