『TOKYO0円ハウス0円生活』読んだ。こっちのがいい。ドンファンに出会ったカスタネダのような。

TOKYO 0円ハウス0円生活

TOKYO 0円ハウス0円生活

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

TOKYO 0円ハウス 0円生活 (河出文庫)

先日読んだ『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20110722#p1)がいまいちピンとこなかったのに対して、こっちのはよかった。書いてあることはまぁおんなじで、つまり「ゼロから」のほうが、やきなおしで自分の言葉で書きなおしているのでいまいちなんである。『TOKYO0円ハウス0円生活』のほうが先に書かれていて、みずみずしいかんじがする。前半は、隅田川のブルーシートハウスに住む「鈴木さん」に出会っていろいろと教えてもらうというはなし。この辺を読んでいて、なんかドンファンに出会ったカスタネダ、をおもいだした。いやまあ、大した話をしているわけではなくて、いわゆるホームレスの住まいと生活について、といえばいえるのだけれど、いやいや、「ホームレス」ではなくて、ちゃんと住まいを持って生活をしている、それが思いがけず豊かで知恵に満ちているというのもほんとうらしいところなんである。そのへんがすごく魅力的に描かれている。「鈴木さん」の語り口を再現するような文体がけっこうポイントで、『ゼロから始める』で消えてしまったのはそれかもしれない。で、後半はがらっとかわって、著者の半生記ってかんじで、子ども時代から語り起こして大学で建築学科に学びつつ、いい先生に恵まれてへんなことばっかしやっててその流れでこんなふうになった、というのを種明かししている。著者が、ジャーナリストでも社会学者でも民俗学者でもなくて、建築、というものへの一貫した関心からこういう問題提起的な活動にいたった、というのがわかる。で、その半生記の到達点が、隅田川での「鈴木さん」との出会いにつながって、お話がぐるっと最初に戻って、そこから鈴木さんの未来の夢を語る話につながって本編の結び、さらに「あとがき」ではこの本の草稿をもって鈴木さんを訪れる、という構成。けっこうしゃれてるんである。