『少年メリケンサック』は宮崎あおいのための映画、『バブルへGO!』は広末涼子の魅力を引き出せなかったフジテレビ映画、だった。

つんどくのDVDの中に見かけて、気楽な邦画コメディってことで見た。

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]

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これ、公開時にテレビでやってた予告編を見たときに、ちょうど大河ドラマ篤姫』がそれなりの評判で終わったころだったとおもうのだけれど、すっかり大河女優になってしまったかと思った宮崎あおいがしょぼいアホOL的なかんじで「キタあァッーーーーー!!!」とかいってるのを見て、これはいいかも、と思ったものだったのである。で、じっさいに映画全篇みて、どうだったかというと、ほとんど予告編で出尽くしてたといえなくはないものの、とにかく宮崎あおいの魅力が出ていて、アホづくりなところから、きちんとした芝居の演技まで、振れ幅の大きい役どころをまったく自然にこの人はこういう人なんだと思わせるようにこなしてるわけで、これはすごい、大河ドラマからの振れ幅ということも含めて、たんなる大河女優どころではないうまさだなぁ、と舌を巻いた。で、思い出せば公開時にあれほどしつこく宣伝されていたにもかかわらずこの映画の監督がだれだったのかを思い出せないまま見ていて、最後のクレジットではじめて、クドカン作品だったことを思い出した。えー?クドカンって、ホモソーシャルな男子ドラマしか書けない人かと思ってたのに、こんな宮崎あおいだけのための映画みたいなのをつくれるんだー、と思った。
まぁ文句を言うと、もうちょっとおはなしを整理して短くしたら良かった。さいごの怪我してどうの、テレビに出てどうの、というあたりのくだりは別に要らなかったと思う。また、大スターと共演してどうの、というところは本気でやるならもっと膨らませられるところ、っていうかそういうつもりだったんじゃないかというのが空振りになってるので、あの大スターのロックスターぶりがなんの伏線にもなってなかったわけで、そのへんの整理の仕方がいまひとつだったかなあ、という気がした。パンクの話なんだからパンクに短く終わるもんだろう、と思った。
で、気楽な邦画コメディつながりでもう一本、で、この流れは、こんどは広末の魅力が満載でないといけない流れなのだけれど、あんましうまく出てなかった。フジテレビが作った映画、監督がホイチョイプロダクション、ということで、いかにもテレビ的なダラダラしたかんじになっててざんねん。広末が、1980年生まれってことで2007年時点で27才?でもう実生活では子供も産んで母親になってたのは誰でも知っていて、だけどこの映画で22才ぐらい?の娘役の役回りで、そのへんの無理感ってのはひとつあったかも。あと、それも関係あるけど広末って、いちどピークがあって、びみょうなかんじで出産休業して、それから復帰した、ということなので、基本的に「現在」の人、というキャラクターではないわけで、それは現在魅力があるないということとは別の次元の話。たとえば、なんでもでてくるWikipediaによれば「1996年に出演したNTTドコモポケベルのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」で一躍有名になる」だそうなので、広末が過去に行ってポケベル見て驚く、という作劇は、楽屋オチのつもりかもしれないけれどやはりドラマの切れ味を悪くする。このお話はあくまで、2007年現在の女の子が、タイムマシンで1990年に行く、近過去なのにやっぱり遠い「あのころ=バブル」、というのが枠組なんである。
あと、たとえば広末が過去に行って、バブリーな船上卒業パーティーのディスコタイム?で、ほかの人と違う2007年ふうの踊り方をやってしまって、周りの人が驚く、というところ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でいうところのプロムでギターを弾くところですね、たぶん見せ場なのだけれど、ここでの広末の踊りが、まぁ27才一児の母、にしては健闘してるにせよ、まぁびみょうなわけで、90年じゃなくて2007年としてもびみょうなので、これまたドラマの決め所を逃しているし、広末の魅力を引き出しそびれている。
というわけで、まぁ、どうもおはなしとしてだらだらしてそのへんはいまいち。バブル時代の再現にしても、ホイチョイとかフジテレビとかの力量ってこのていどか、というかんじ。ていうか、そもそもバブル時代と現在で、ほんとにバブル時代のほうが贅沢で現在のほうが貧しいのか、というとそうでもない気がして、まぁだからそのへんの、バブル時代の薄っぺらさが薄っぺらく再現されているという意味ではこんなもんかなあと思わなくはないのだけれど、それだと広末が「バブル、最高ーッ!!」とか叫ぶいみがわからなくなるしね。
で、よかったのは阿部ちゃんで、これは90年のプレイボーイ大蔵官僚(なんじゃそりゃ)の役はイメージ上、いちおう納得いく。本当はもう少し、薬師丸ひろ子(大学同期で、広末の母親)と広末との三角関係、みたいな、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ネタを膨らますこともできただろうけれど、まぁそうはならないけれど。ともあれ、「キくねぇ!」の決め台詞は、わるくない。
あとどうでもいいことでいうと、ポケットから小銭を出す、というのが、本日の二本立ての共通点であって、その使い方は、『バブルへGO!』のほうもなかなかよかった。ただ出すんじゃなくて、いちど電話を通すところが、なるほど!と思った。