『小澤征爾さんと、音楽について話をする』読んだ。クラシック話もたまにはいいねえ。

小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

クラシックを聴くようになるチャンスは、あったのだけれど結局そうはならずに現在に至るんである。いろいろな教養がいちいち深くてもちろんクラシックに非常に詳しくて人に教えるのもうまくていろいろなことを教えてくれる同級生が近所に住んでる、というシチュエーションが学生時代からあって、じっさい、クラシックについても案内してもらったこともあって、それは面白かったのだけれど、やはりクラシック音楽というのは自分的には続かなかったんで、もっぱらジャズのほうでということでいまにいたる。で、やることというのは、まぁジャズから入ったからということもあるのだけれど、いい演奏で、いい曲を、複数ヴァージョンで聴き比べながら、聴きどころを解説してもらう、みたいなこと。そういうかんじで教えてもらえないでしょうかと頼んで、まぁジャズを聴く人間にとっつきやすいということでまずシンプルにピアノから、で当時のことなのでグールド、で「ゴルトベルク変奏曲」の初期と晩年の録音、を出発点にということでいろいろ紹介してもらったので、なんかゴルトベルク変奏曲だけピアノとチェンバロと取り混ぜて5,6種類だかもっとだか聴き比べさせてもらって、それはやはり面白かった。で、バッハの小さい曲をいくつかそんな感じで教えてもらっていたのだけれど、やはりクラシックは手ごわいというので自分的にあとが続かなかったけど。あ、あと、その同級生は下宿にある程度ちゃんとした音の鳴るオーディオを組んでたので、そうするとたしかにクラシックも面白かったというのもある。ジャズを聴くのと本質的にそんなに違うわけではないと思ったけれど、音楽を大きく&繊細にとらえる力っていうか姿勢が出来てないと、聴きどころを聴き取れないのかなあと思ったし、あとやはりそれなりの時間をかけて(一曲の演奏時間そのものも長いし、クラシック耳ができるまでの期間も長い時間かかるし)、またお金もかけて(やはりジャズを聴くよりもっといい機器がほしくなるだろうなあと思う)、じゃないと身につかないかなあ、という気がした。
で、この本。出てるなあと思っていて、まぁ春休みに読もうかぐらいに思っていて買ってしばらく放置していたのだけれど、読んでみたら、途中からやはりおもしろくなってきた。小澤の過去の録音なんかを聴き比べながらその演奏についてとか思い出話とかを聞き出したり、音楽談義みたいになったり、そういうかんじ。本で読んでるぶんにはもとの音源を聴いてないのでそのへんはなんともいえないのだけれど、でも、なにを言おうとしているかはなんとなくわかるってかんじ。指揮者という人は楽譜を読み込んでその曲の言わんとするところを分析的に明らかにしてそれを演奏者たちに伝えて実現していく、ディレクションするのが商売なわけで、その中で、「内声をはっきり浮かび上がらせる」「細部をきっちり鳴らすことで全体を浮かび上がらせる」みたいなことをやってくと。まぁ、下宿の安いCDラジカセでせこい音で聴いててもしんどいけれど、やろうとしてることはわからんではない、という部分を、村上春樹クラシック音楽小澤征爾という人から引き出してるようである。