風呂で読む『帰れぬ人びと』。女子高生が書いたウェルメイドなくすんだ昭和。

帰れぬ人びと (文春文庫)

帰れぬ人びと (文春文庫)

短編が4本なので、半分を風呂で読んで半分を寝床で読んだ。くすんだような澱んだような東京の下町の空気の中で、ややこしい家族関係の過去を無感動にやりすごそうとする男がふと自分自身に直面してしまうみたいなかんじのおはなしが、にぶいサスペンス(ちょっとした謎)でひっぱりつつ展開する、これはやはり女子高生〜女子大生がこれを書いたということになると驚きなのだけれど、まぁ著者の後年のエッセイとか見たり(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20090708#p2)、あと結局、著者は早世してしまうわけで、やっぱりこれは、女子高生云々というのとはべつにして、著者としては書くべくして書いたのだなと思われるわけである。まぁ、それはそれとして、作品の感動が深いですかといわれれば、まぁ、ウェルメイドな感じはやはりあるわけだけどね。でも、たとえば背中を蹴ったの蹴らないのみたいなはなしよりは、ちゃんと文学してるし、下手な文章だなと思わせるところも少ない。