通勤電車で飛ばし読んだ『マンガ 夢分析の世界へ』。ほんとにマンガだった。そのことの功罪やいかに。

ふと見かけておもしろそうだったので。著者の人はユング派がベースにあるカウンセラーの人。で、こういうのはだいたいてきとうなマンガが半分ぐらいあってあとの半分が文章で説明、みたいなのが多いとしたもんだが、これは全部マンガ。解説も8コマ漫画になってて要するにあとがき以外ぜんぶマンガ。で、4つのおはなしになってて、女子大生、大学院生、OL、中年サラリーマンがそれぞれ登場する。で、それぞれに屈託をかかえつつ歩いているとふと何かに誘われるように不思議な館に行きつき…そこには謎のカウンセラーと謎のもふもふしたものがいて、「夢日記」を書いてごらんとノートを渡される。で、夢を見ては館に行ってカウンセラーにそれを話す、みたいな。そんなことを何度かしているうちになんとなく気が付いたら屈託が消えて前に進んでいました、みたいな。なんかそんなかんじのはなしが4話。でまぁ、その登場人物については、なんとなく著者の人が会ったクライアントさんとかのはなしがなんとなくもとになってたりもするようだし、まぁ著者の人もたぶんちゃんとしたカウンセラーの人なのだろうから、お話そのものとか夢そのものとかその夢の扱い方そのものについては、まぁそれっぽいのかな、というふうに感じた。あとがきにあるように、マンガで親しみやすく、ストーリーとして夢分析の本質を伝える、というねらいは、いちおう達せられているようにも見える。
まぁしかし、親しみやすいこの本で「本質」をコンパクトに伝えることがいいことなのかはちょっとわからんところもあって、つまり、本質ってことで言えば、たぶんカウンセリングの本質に近い所に、無駄な時間をぜいたくに待つ、みたいなのもあるんじゃないのか、というのがある。コンパクトな「本質」だけなんてないよね、というか。なんのこっちゃわからん夢をごちゃごちゃあつかいながら気が付いたら何年も経ってました、みたいなぜいたくな時間の流れがあってもおかしくないだろうに、マンガでコンパクトに伝えると、あっというまに登場人物が抱えていた屈託が解決してしまう。そういうものだと誤解を与えたら入門書としてよろしくないのでは、等々。
あとまぁ、あとがきではちょっと注意を喚起してたけど、まぁふつう、初対面の誰でもかれでも夢日記を勧めるなどというのはたぶんよろしくなくて、夢なんかに触ると悪化する人ってたぶんいるだろう。
あとまぁもうひとついうと、まぁこれは夢分析の本なのでしかたないけど、この本のカウンセラーとクライアント(?)の間には転移が積極的に描かれてないような気がする。そうすると、夢解釈のほうが妙に本質化っていうかなんていうか、しちゃうんじゃないかとも見える。等々。