このところ読んでた『社会契約論』。人造人間Tシャツの女。

著者の人は『フーコーの穴』の人で、名前の字面からしても重々しい人かと思っていたと以前もここに書いたのだけれど、なんかだんだん主に著者写真によってイメージが変わってきて、ついに「人造人間」とプリントされた、よれたTシャツ姿の売れない女芸人みたいな近影である。まぁ文章も読みやすくなって、というかカジュアルなかんじに与太を飛ばしつつである。あとがきのところは相当な体温で書いているようだけれど映画監督の浦山桐郎という人の名前をあげていて数行後に桐山監督と書いてあるのはたぶん校正が熱気に届かなかったということかと思う。
で、内容はというと、「社会契約論」という思考を「約束」をめぐる思考、社会秩序の基盤を「約束」に見出そうとする思考というふうに見るために、ホッブズ、ルソー、ロールズ、および敵役としてヒューム、の議論を辿るというもの。勉強になった。のか、あたりまえのところに着地したのかよくわからんところもあって、「自分が嫌なことは人にしないってお約束しましょうね」みたいなことかしらと一瞬、思わんでもない(特殊と一般が含まれている「約束」ではあるのだな)。ていうかだから、敵役として登場のヒュームがたぶん重要で、つまり今の世の中誰もが「ヒュームで正解じゃん?」と言っているところに、いやいや違いますルソーが大事なのです、ということなのだろうと思う。
それはともかく、ルソーの歴史観は6の字であるという素晴らしい説が書いてあってこれは図とともに広めるべき。甲府が自然状態で、新宿において文明が一定の状態に達して政治社会が形成される、とともに繁栄・腐敗のサイクルをぐるっとまわってきゃあーもうダメ!!と堕落の果てが再び新宿、円環が閉じて以下つねに反復的に新宿、そこがすなわち社会契約の地点であるという。新宿ってそうだったのか、すばらしい。