原題は「OtherMinds」というのだそうで、われわれと異なる知的生命体たち、というかんじで、まぁようするにタコのはなし。著者の人は哲学者ってことで、肩書には「生物哲学」「
心の哲学」とか書いてある。タコはとても賢いのだそうで、ひとの顔を見分けたり、いろいろなことを覚えていたりできるそうだ。それで、脳みそも大きいようで、しかし正確には、脳みそというよりも神経系、というかんじで、タコは足にも
ニューロンがあって、つまり足は独立して動くことができる。中央集権じゃなくて分散型のネットワークというかんじ。それでタコはぐにゃぐにゃと手足を動かして複雑に動くことができる。迷路も解ける。水槽からこちらの様子を伺って人の見ているときはじっとしていて見てない隙に水槽から逃げ出したりする。そうするとたとえばタコの - つまりたとえば分散型ネットワークにおける、ということにもなるわけだが - 「主観的経験」というのはどんなかんじなのか?というか、私たち人間が主観とか経験とか言っているものはそもそもどんなもんなのか?それで、ヒュームとか
ヴィゴツキーとかが出てきて - 著者はデューイの
プラグマティズムが専門のひとつだと - タコの言語的知性?について考察してみたり - いやまぁタコがぺらぺら喋るわけではないけれど、タコとか同じ頭足類の
コウイカなんかは極めて多彩に皮膚の色を変えることができ、どうみても生理的必然性をはるかに超えた複雑で規則的な情報を体表にディスプレイしている - などなど、まぁタコから見る哲学というのが、ふしぎなことに成立しているのである。