『ブラック・デモクラシー』読んだ。

薬師院さんが参加している本。まえに読んだ本(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20160805#p1)とほぼ同時期に出ている。まぁ、あの騒ぎが一段落して、総括する本として出た、というかんじ。薬師院さんはこの本では最後の章を担当していて、民主主義とはそも何ぞやという話、とくに「大阪都構想」さわぎでクローズアップされた住民投票というののロジックを、ルソーとかモンテスキューとかミルとかケルゼンとかを参照しつつまとめている。前のほうの章との対照で、より「理論的」な位置にある章。と同時に、まぁこの本含め、理論的なことをやってる人は具体的でめんどくさいことにちゃんと付き合わないとだめなのである、ということを最後に言ってるわけで、まぁ前の本と合わせて読むべし(事実の紹介なんかは重なっているところはあるけれど)、というところ。
「ブラック・デモクラシー」ということばじたいは、もしかして編者の人が思いついたのかもしれないけれど、気分はわかるけれどちょっとあやういっていうか安易っていうか。適菜収という人が参加しているというので、その印象はいよいよ増す(意外と適菜さんの章「潜入ルポ これぞ戦後最大の詐欺である」はふつうの潜入ルポで、都構想タウンミーティングを見に行ったらけっこうなものだった、という内容)けれど、そのへん、薬師院さんの章はあきらかに温度が違って、そのへんが読みどころ。B層がどうのとか、衆愚政治批判とか、「選挙権免許制度」の提唱(呉智英)とか、まぁあれこれ言われているけれど、まぁそういうことが論じられるのは今に始まったことではなくてそもそも民主主義というロジックには当初から付物だったし、また今回の都構想にかんしても、「選挙権免許制度」で合格しないはずもない人たちが賛成反対いずれの側にもいたわけで、まぁそういう人たちが、自分の望まないほうの結果になったときに「あれはB層が・・・無知な衆愚が・・・」と言うのも、まぁ昔からのことで・・・

ここで、話は振り出しに戻る。大阪での経験が、試験や免許の有効性に疑問符を突きつけたからである。我々は、「知識を持つ者に見識や判断力がある保証はない」という事実を直視した上で、普通選挙に基づく間接民主主義の妥当性について再考しなければならないのである。それにしても、近年の日本でゴチャゴチャと議論されている問題など、はるか昔にモンテスキューやルソーやミルが取り上げているのだ。昨今の大学では、何とかラーニングとやらが大流行りだが、古典名著の熟読といった古い学問的態度を嘗めてはならない。

れいによってなんとなく可笑しい。