通勤電車で読んだ『文章は接続詞で決まる』。これはよい本。文章作成する本人やライティングの指導をする先生が読むといいと思う。

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

文章は接続詞で決まる (光文社新書)

れいによってTwitterか何かで流れてきて、よさげだったので読んでみたらよかった。著者の人は言語学の人なんだが、接続詞というのは専門的な研究が薄いよとのっけから言うわけである。なぜといって、接続詞はだいたい文と文とをつなげるもので、一文の構造に直接かかわるわけではないので、文の構造に焦点を当てているとどうしても接続詞というのが周辺的な位置づけになってくるよと。いわれてみればそうだ。そしてしかし、文章ということでいえば、接続詞というのはとても重要だよと。そりゃそうだ。
なので、この本は、新書版で読みやすくわかりやすく、接続詞の使われ方使い方を整理してる。接続詞をいくつかの種類に分類しながら、「論理の接続詞」「整理の接続詞」「理解の接続詞」「展開の接続詞」「文末の接続詞」みたいな大きな分類、その中でたとえば、「論理の接続詞」のなかには順接と逆接があるわけだし、順接の中でも大きく「だから」系と「それなら」系をとりあげ、おなじく逆接の中では「しかし」系と「ところが」系をとりあげ、例文をあげながら解説する、というぐあい。
大昔まだ就職する前の、研究室の後輩とかとがやがやいろんなことを喋って暮らしていたころ、「論文生成装置」みたいなものを考えていたことがあって、つまり、論文の文法構造みたいなものに、先行研究とかアイディアとかデータとかを投入すると、論文が生成される、みたいなイメージ。その重要な部品として、接続詞というのがあるなあ、だから接続詞の機能や使い方を整理しておくといいなあ、というところまでは考えていたけれど、まぁそれはなんとなくそれきりになって月日が経って今に至る。で、この本で、まさに自分がイメージしていたようなことをちゃんと専門の著者の人がちゃんとやってくれてるぞという感じがして、だから自分的にはこれはとてもよい本。さしあたり自分が、文章を作成する本人として読んでためになると思う、というのもあるけれど、たとえばうちの学生さんたちの作文指導で「これ読んどけ」みたいなやりかたをしても、一冊まるまる接続詞というのはそれはそれで学生さんにはちょっとハードルかもなのだけれど、たとえばライティングの指導をする先生が読んで、一覧表かカードかなにかにまとめて教材にする、みたいなイメージは全然ありだと思う。この本の中にも書いてあるけれど、いわゆるパラグラフライティングの作文指導でも、パラグラフの構成とかは強調しているけれど意外と接続詞というのが盲点になってるというのは、うなづけるところで、だから、この本、けっこう使える気がするんである。
でまぁついでにいうと、この本ではたくさんの接続詞が扱われているけれど、自分が大昔に「論文生成装置」のアイディアの中で思い浮かべていた接続詞のひとつ、「たしかに〜ではあるが、しかし〜」というのが出てこないのはちょっとざんねん。論文でそういう構文(一定の留保を示しながら主張する、みたいな?)は使いたくなる気がするんだけど。
あとまぁ、どうでもいいけど著者の人の名前を見て、石黒ケイ?と思うわけだけれど、そのことがちゃんと例文として触れられているのでにっこりする。
ちなみに、
「論文生成装置」のアイディアに関連して、たしか、大塚英志『キャラクターメーカー』をむかし読んだ時に、意外とこれ大学院生ぐらいが論文を書くときの参考になるんじゃないかと思いながら読んでた覚えがある(http://d.hatena.ne.jp/k-i-t/20080513#p4)。