『意志の勝利』みた。プロパガンダ。

意志の勝利 [DVD]

意志の勝利 [DVD]

  • 発売日: 2010/01/29
  • メディア: DVD
以前、デジタルリマスター版が出たときに、買ったんだがそのままつんどくになってたのを、見た。まぁ、これ見ていきなりナチに共感したくなるとかそういうものでもなくて、まぁふつうっちゃふつう。おなじレニ・リーフェンシュタールの『民族の祭典』『美の祭典』をみたときはさほどかっこいいとも思わなかったが、さすがに『意志の勝利』はかっこよかった。ニュルンベルクで行われたナチの党大会の3日間の記録ということで、さいしょに雲をぬけて飛ぶ飛行機の目線からはじまり、そこから高度を下げて眼下にニュルンベルクの街が現れる。地上では美しいニュルンベルクの街路、飛行場、そしてそこにヒトラーが降臨、熱狂的に歓迎する人々、ハイルヒットラーの敬礼、それに応えるヒトラーが、チャップリンみたいにちょこっと片手を上げる。そこからは、とにかく群衆の熱狂、軍服のおっさんや青年たちの圧倒的な、整然とした列、ナチの旗、鈎十字、昼のシーン、夜のシーン、戸外のシーン、屋内のシーン、巨大な祭壇みたいな建物、演壇の上に次々現れてはナチスドイツを熱烈に賛美する高官たちの演説、一言一言にいちいちの拍手、ハイルヒットラーの敬礼、…みたいなのが場面を変えつつ続く。でまぁ、ヒトラーが演説をすると。でまぁ、いまこれを見ていきなり何か強烈に洗脳的とかいうふうには見えない。へー、というかんじ。ナチ、きてるなあー、と。それでまぁ、かっこいいなあ、と。まぁそこまではいいとして、しかしじつはたぶんやっかいなのは、これが「ふつうにかっこいい」ように見えることで、ヒトラーの演説だってなんとなくよさげなところを切り取ればふつうによさげなことを言ってるし、たぶん上手に切り取ってきさえすれば令和の日本でも通用しそうにみえるし、「スガちゃんも国のリーダーなんだからもうちょっと勉強してこのぐらい内容のある一本筋の通ったことを堂々と演説すればいいのに」ぐらい思いかねないところはある。それで「こういう演説をする人物が出てきたらリーダーとしてふさわしいから一票いれたいな」ぐらいになると、むむむ?ちょっとまってそれでいいんだっけ?となってくる。このDVDをプレーヤーに入れると、作品の前に字幕で、いかにナチが悪いことをしてこの作品が歴史的な罪を負っているかを説明して、それから本編が始まるのだけれど、まぁ、見てみたらべつに狂ったことは言ってないんじゃないかと見える、拍子抜けというか、なあんだふつうじゃん、むしろこのぐらいがかっこいいよねとなって、まぁだからそれがプロパガンダということなのだろうね。

プロパガンダというと、
『新しき土』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20051226/p2)とか『真珠湾攻撃』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20041208/p2)とか。まぁ、マキノの国策映画(https://k-i-t.hatenablog.com/search?q=%E3%83%9E%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%80%80%E5%9B%BD%E7%AD%96%E6%98%A0%E7%94%BB)もあったけどあれはさすがにいまいちだったかな。