団塊世代退職で労働力、技能伝承に影響…経済財政白書

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050715-00000004-yom-bus_all

 竹中経済財政相は15日の閣議に、2005年度年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。

 白書は、07年に始まる戦後の第1次ベビーブーム世代(団塊世代)の定年退職や総人口の減少が、日本経済にもたらす影響を初めて分析した。

 労働力の減少がもたらすマイナスの影響を克服して、経済の安定的な成長を目指すには、人材の質向上などで生産性を高める必要があると訴えている。日本経済の現状については「『バブル後』と呼ばれた時期を確実に抜け出した」と宣言、緩やかなデフレは続いているものの、民需主導の景気回復が実現しつつあると強調した。

 団塊世代(1947年〜49年生まれ)の人口は約680万人で総人口の5・3%を占め、労働力など経済面でひときわ大きな存在だ。白書は、07年に始まる団塊世代の定年退職と総人口の減少を「人口の波」と命名し、家計の行動や企業競争力に与える影響を分析した。

 家計行動に関しては、退職した団塊世代が貯蓄を取り崩す生活に入り、健康関連や旅行など教養娯楽への支出を増やすため、国内全体の消費の押し上げ要因となり、「財」よりも「サービス」へといった消費構造の変化をもたらすなどと予測した。

 一方、企業競争力に関しては、退職一時金や企業年金などの負担が増えて収益が圧迫され、設備投資に悪影響が出るなどのマイナス面と、人件費が抑制されて若年者の雇用が増加するなどのプラス面を、それぞれ指摘した。

 日本企業の技術力を支えてきた団塊世代の技能を伝承するため、意欲と能力のある高齢労働者の雇用を継続する必要があるとしたほか、労働力の減少を補うため、付加価値の高い技術の開発や、技術を経営に生かす体制の整備、若年層を中心にした労働の質向上が求められるとしている。

 また、白書は、少子高齢化の進展による社会保障費の膨張などで、国民負担の増大が見込まれる中で、歳出を削減して国民負担の増加を抑える「小さな政府」を目指すべきだと強調した。

 医療、介護、教育、保育など公的な関与が強い「官製市場」の民間への開放を進め、公共サービスを官と民が入札で競う「市場化テスト」の本格導入などで、行政サービスの提供者が常に競争にさらされる環境を整備することが重要だと訴えた。
(読売新聞) - 7月15日12時38分更新


平成17年度版経済財政白書
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je05/05.html