ノウハウ生かします 不振公共施設、民の力で再生

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200602270033.html

ノウハウ生かします 不振公共施設、民の力で再生
2006年02月27日

 不振の公共施設の立て直しは私たちに任せて――。博物館や温泉など、大阪市の70施設の管理運営を、今年4月から、民間企業が担うことになった。自治体かその外郭団体に限ってきた公共施設の運営を民間に開放する「指定管理者制度」によるもの。大手企業が次々に名乗りを挙げ、民間ならではのアイデアとノウハウで収益アップに取り組む。果たして、財政難の大阪市の救世主となれるか。

 「施設の潜在能力は高い。集客目標は今の9倍の35万人」

 そう言い切るのは、大阪・ミナミでサウナ5店を展開するニュージャパン観光の森田勝利専務。同社が運営するのは東住吉区の温泉施設「ゆとり健康創造館(ラスパOSAKA)」。

 建設費100億円をかけて99年に開業したが、利用者は伸び悩み、年間目標20万人に対し、ここ数年は4万人台。毎年3千万円の赤字に悩む。

 森田氏によると、不振の原因は明らか。フィットネス施設は立派なのに、温泉は小さくて水着着用の規制つき。近くのスーパー銭湯に客足を奪われているという。

 4月以降、温泉施設の大幅改装に着手。タイ式マッサージやネイルアート、散髪コーナーを設け、「総合健康センター」として再生する。レストランもメニューを一から練り直して収益アップをねらう。

 吉本興業も名乗りを上げた。請け負うのは大阪南港の海洋博物館「なにわの海の時空館」。

 00年に開業。江戸時代に活躍した実物大の菱垣廻船を展示、巨大な円形ドームの外観が人気を呼び、初年度は20万人を集めた。しかし、財政難で展示品の更新が遅れ、04年度の利用者は11万人に落ち込んだ。

 同社の養成所NSCで学ぶ「芸人の卵」を説明役に起用。江戸時代の町人に扮し、お年寄りや子どもにもわかりやすくて面白い説明でリピーター獲得をねらう。

 事業統括本部の大谷常一プロデューサーは「ここを登竜門にして本格デビューする人も出てくる。仕事の少ない彼らの収入確保にもなる」。

 大阪湾岸の人工島、舞洲(まいしま)にある野球場やグラウンド、体育館など4施設を一括で管理するのは、スポーツ用品メーカーのミズノ。

 スポーツ大会の際に、自社製品に触れてもらうコーナーを設け、インストラクターが丁寧にアドバイス。口コミでの売り上げ増加をねらう。夏休みには親子スポーツ教室を開き、将来の「ミズノファン」開拓につなげたいという。

 国の重要文化財でもある中之島の中央公会堂はサントリーの子会社、サントリーパブリシティサービスが運営する。美術館などを手がけてきたノウハウを生かし、文化事業の誘致に取り組む。大村未菜企画開発部長は「文化活動に取り組むサントリーの企業イメージを強めたい」と期待している。

     ◇

 〈指定管理者制度〉公共施設の管理は、自治体かその外郭団体などに限られていたが、地方自治法の改正で03年9月から、民間企業や非営利組織(NPO)を含む幅広い団体(指定管理者)に委ねることができるようになった。サービス向上やコスト削減が狙い。指定管理者を導入する施設は条例で定め、委託先は議会の議決を経て指定する。大阪市は今年4月から、213施設が指定管理者に移行する。うち99施設は非公募で従来通りの外郭団体などが管理するが、公募した114施設のうち70施設を民間企業26社が管理する。

指定管理者制度、である。
「サービス向上やコスト削減が狙い」、というんだけど、この「サービス向上」ってのが曲者で、良くも悪くも、というとこなんでもんだいになっとるのである。
去年はやった郵便局の話とおなじですな。

ていうか、正確には、郵便なら郵便物の内容が大事で誰が届けるかは本質ではない、といえなくはないけれど、
博物館の場合は、博物館としてのやくわりというものがある(はずな)わけで、それを実現させねばならん、というのがスジなんである。
そのためには、自治体がやるのか、吉本興業がやるのか、誰がどういうやりかたでやるのか、ということは、本質的な問題にもなってくる。
市民の健康増進のために本当に必要なことは何なのか、という問題があって、そのために温泉施設を市が作りました、それをどう管理運営していくべきでしょうか、という筋道なんで、
ニュージャパンのノウハウによってそれがよりよく実現できるならそうすべきだろうし、ニュージャパンに任せたら市民の健康増進という本来の目的から離れて民間の営利目的の施設とおなじになりよんで、ということなら、ちょっと待ってよ(いまさらでも)ということには、なるのだけれど。
もちろん、ニュージャパンさん、ちゃんと準備して責任もって、市民の健康増進について本気で取り組んでくださいね、吉本さんも博物館の社会的責任というのをちゃんと果たす仕組みをつくってよね、というのが、この記事の感想っていうことなのだな。