キャンパスNOW:TOPICS 大学の講義内容、世界に発信 ◇日本OCWコンソーシアム設立

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/wadai/news/20060628ddn010040048000c.html

キャンパスNOW:TOPICS 大学の講義内容、世界に発信
 ◇日本OCWコンソーシアム設立

 インターネットで大学の講義情報を公開するオープンコースウエア(OCW)が日本の主要な大学で広がっている。今年4月、京都大に関係者が集まって「日本オープンコースウエア・コンソーシアム」が設立され、日本の大学の情報を世界的に発信し、知識の国際化に向けての活動を本格的に始めた。

 OCWは、米マサチューセッツ工科大(MIT)が01年から開始し、すでに1100コース以上を公開している。日本では05年5月、京都大など6大学が連絡会を発足させ、授業計画や講義ノート、課題、講義ビデオなどを公開してきた。

 今回、コンソーシアムに参加したのは、京都大のほか東京大、大阪大、慶応大、東京工大、早稲田大、名古屋大、九州大、北海道大の9大学とメディア教育開発センター。事務局を慶応大に置き、OCWの国内での普及や、講義の公開に伴う知的所有権問題などの情報交換を進め、今後、日本の大学から世界への発信力を強めていく。

 OCWの基本的な理念は、「教材」は「教育」の一部で、大学や人類の財産として国際的な知的貢献に役立てようというもの。各大学の講義のシラバス(計画概要)やノートを無償で公開し、非営利の教育目的であれば、コピーや配布等を自由に認めている。すでにMITの内容について中国語化(翻訳)やスペイン語化が進行中で、中国のトップ10大学の教材公開も予定されている。

 日本の大学も国際社会に知的貢献や情報発信を行わないと、世界の主流から取り残されかねない。「OCWは学術、知識の細分化した状況を解決する一つの手助けにネる。MIT、世界の講義と連結されることで、単位の互換や知識の国際化を推進できるのではないか」(東京大)、「教育者中心の学習から、学習者中心のオープンアクセスによる学習を可能とする世界を構築するムーブメントの出発点となる」(慶応大)と各大学の受け止め方もさまざまだ。

 京都大では現在、約50コースを公開。アジア各国からの優秀な留学生を集める一方、世界に向けて、京都の文化・伝統をアピールするために積極的に日本語も活用する。さらにOCWを新しい教育メディアとしてアジア各国とのコミュニケーションを高め、国際交流を推進するという。

 京都大OCWプロジェクト担当の美濃導彦教授は「大学はこれまで研究成果は公表してきたが、教育内容についてほとんど公開してこなかった。講義内容や教材を広く知らせることは、教員にとっても自らの講義を見直すいい機会になる」と語る。

 世界に通用する大学教育とは何か。OCWは従来よりも次元の高い教育課題を各大学に突きつけている。【池田知隆】

毎日新聞 2006年6月28日 大阪朝刊