- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2005/07/29
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それはそれとして、本作は舞台がウィーン。とってつけたようである。寅さんも最後に、俺は本当にウィーンに行ったのかなとぼんやり述懐するように、なんだか寅さんじゃないふうである。ウィーンを舞台にして寅さんの映画の画面にはならなかった感じ。また、マドンナ役が竹下景子だというのだけれど、寅さんと何がどうこうあるわけでもなく、ようするに寅さんは年齢がいきすぎてしまったようなんである。次の作品『ぼくの伯父さん』からは満男と後藤久美子が恋愛ぶぶんを担当することになるわけで、なんていうか本作は寅さんの一軍現役引退試合みたいなもんでもあるんである。
さくらが、お兄ちゃんはウィーンに行ってたんじゃなくてほんとは夢をみていたんじゃないでしょうか、といい、御前様が、寅の人生が夢見たいなもんじゃから、といい、さくらが、その夢はいつさめるんでしょうか、というのだけれど、もちろん、今となっては、その夢があと数年で覚めてしまうのだということも知っているのだから胸を衝かれるのだし、次回第42作から最終48作まではどうしても現役引退後の最終章めいてこざるをえない以上、本作は、1989年という年号に寅さんなりに反応してしまった、夢の終わりの始まりっていうか、
歴史の終焉というやつなのか。