このところ見ていた『エヴァンゲリオン』。労多くしてなんとやらというか、まともなものを完成させる気のない者に付き合うのは辛いものだ。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序

  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Prime Video
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

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  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Prime Video
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q

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  • 発売日: 2019/12/01
  • メディア: Prime Video
だいたい『エヴァンゲリオン』というのは通ってきてないわけで、いちおう何度目かの再放送というか年末の四夜連続一挙放送みたいなときに録画して見たんだが、なにせアナログ時代のテレビ大阪が当時の下宿では電波が悪くて始終雨が降ったりほとんど判別困難になったりという画質だった。それでまたあるとき、近所のたしかブックオフか何かで大瀧啓裕『エヴァンゲリオンの夢』という狂った(よい意味です。驚嘆すべき)本を見かけてなんとなく買って、二段組み400ページ以上の、P.K.ディック『ヴァリス』の訳者による詳細な、そして狂った(よい意味です。神秘主義にかんする該博な知識をもとに仮説を立てては検証し、テレビ版一話ごとにその隠された意味を解読し、最終的に全体として完全につじつまの合った解釈を提示している。よくぞここまでやった)解読を参照しながらまた全話見直したのも大昔の事だったわけだけれど、印象は、なるほど大瀧啓裕がここまで精密に読み込むのであればすごいのだろうと思いつつ、まぁしかし最終的にはどう見ても大瀧本は過ぎた解読であって、やはり『エヴァンゲリオン』そのものは原作者がよろしくないというか、90年代ふうというか、ツイン・ピークス商法というか、いかにも思わせぶりで意味ありげな細部をてきとうに振りまいておけばあとはオタクの皆さんが適宜読み込んで意味を探してくれる、でももちろん正解はないので、際限なく迷い続け意味を探し求め続けるオタクの皆さんから無限に収益を上げることができるというしかけじゃないかと見えて、やはりそれに釣られたいとは思わなかったわけである。たぶんもともとは、オタク自身が作った夢の最強ロボットアニメだったはずで、ところがどうにも制作がうまくいかず、絵が荒れてセルの使いまわしや節約や総集編回が増え、物語は停滞し、しまいには伏線回収の見通しがさっぱり立たなくなって - だからむしろ居直って、回収するつもりもない伏線を振りまくことに専念して - 最終の二話は失笑モノの手抜き回になり - それでまたオタクの皆さんは幻の結末を求めて - 劇場版に走り、というようなことなのだろう、と理解していた。それでまぁ、とうぜん自分は劇場なども行かず、そのまま放っておいて幾年月だったのだけれど、先日、ふとBSの深夜で「新劇場版」三部作放送というのをやっていて、その番宣を見たらふと見たくなってきて、三部作の内の2,3作目は録画できたとなるとそのまえに1作目も見ないといけない気になって中古DVDを物色、そうするとついでにやはりテレビ版から再見しなくてはならない気になってそれも中古で物色、レンタル落ちのセットには最終巻に旧劇場版にほぼ相当するとおぼしき「Air」と「まごころを君に」というのが25'話、26'話として入っていたので(オタク向け商法は細かなバージョン違い商品を出してくるのだが当然いちいち付き合う気もないので)それで旧劇場版はカバーしたことにして、新劇場版と合わせていちおう、一通りカバーしてることになるんじゃないかというところまで集めて、それでテレビ版26話+「Air」「まごころを君に」まで見て、それから大瀧啓裕『エヴァンゲリオンの夢』を再読し、それからまた新劇場版『序』『破』『Q』を見た。やれやれ。それで感想はというと、まぁ変わらなかったというか。ていうかなぜいまBSで特番があったかというと、新劇場版の完結篇たる最新作が近日公開らしいからなのだが、そもそも「序破急」などといいつつけっきょく4部作というのなら、「起承転結」とでもすればいいところを、言わないわけで、つまり、バランスよくまとめるつもりなどないわけで、「序」がある程度まで総集編的だったのが「破」でかなりガラッと根本的に変わり - あれだけ精緻に大瀧啓裕に読解してもらったのはどうなるのかと心配になるぐらい(まぁしかし自分は大瀧本にも細かいところはついていけなかったしエヴァ原作のほうにもついていけてないので、両方わかってないという意味では、意外と新劇場版を含めたって私の予想に反して大瀧本と矛盾してないのかもしれないけれど、まぁ普通に見れば)盛大にちゃぶ台をひっくり返して(しかもいちいち不快な、まさかの禁じ手のようなやりかたでいろいろぶち壊され)、そしてまた「急」を「Q」としてさらにちゃぶ台を根本的にひっくり返して謎をまき散らし(テレビ版からすれば冷静に見て以前思い入れをしていたものがことごとく不快な形でぶちこわされ)、こりゃもうあと一作で伏線が全部回収されてすっきり完成するようにはとても見えず、まぁそういう、伏線乱発詐欺商法というのは、さいしょからまともなものを完成させる気がないわけだから、まぁこちらとしても付き合う気は起らないよなあとおもいつつ、まぁあるていど何日かかけてそれなりに付き合ってしまったわけである。いやぁ、だからですね、オタク自身が作った夢の最強ロボットアニメ、という線でテレビ版が最後まで - もしもお金も時間もなんとかなって - きっちり完成されていれば、それがいちばん早かったっていうかよかったんだと思うなあ。