学校の通信簿(5)生徒は「顧客」 満足度診断

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20071124us41.htm

学校を経営の視点でとらえ、品質向上活動を広げる県がある。

 「今日はかぐや姫の物語について、専門的に勉強したいと思います」

 三重県立北星高校(四日市市)で12日午前に行われた定時制の「国語ステップ」の授業は、7人の生徒が受講、竹取物語を題材に、「たまふ」などの歴史的仮名遣いの読み方を一つ一つ確認しながら進んだ。「ゆっくりしたペースで、分からないところも丁寧に教えてくれるので不安がない」と女子生徒(15)が熱心にノートをとる。

 同校は昨年4月、四日市北高校と四日市高校通信制を統合して誕生した。定時制は午前、午後、夜間の三部制だ。普通の国語とは別に、中学レベルの基礎を学びたいと希望した生徒が受ける「国語ステップ」には午前部に9人、午後部に10人が登録している。

 三重県は3年前から、全県立高校で学校の経営品質向上活動を進めている。目指す学校像を掲げ、具体的行動計画を立て、「顧客」と位置づけた生徒の満足度を高める取り組みだ。

 北星高校が目指すのは「学びたいときに、学びたいスタイルで学べる学校」。ステップ科目は、その目標のための具体的行動の一つだ。不登校経験者などの基礎学力を補うことを目的に5教科で開設。定時制の生徒463人のうち、最も多い理科の履修者は70人にのぼる。

 生徒へのアンケートでも約9割が満足している結果が出た。1年次の退学者は四日市北高時代の01年には16人だったが、昨年は4人に減った。



 県は学校経営品質の向上活動を小中学校にも広げている。昨年度は約8割が取り入れた。

 鈴鹿市鼓ヶ浦中学校の目指す学校像は「明日も来たいと思う学校づくり」。 同校では不登校の生徒が全校生徒の5・1%と高い割合だったことから、今年度は3・5%を目標に設定。級友関係を問うアンケートをしたり、いじめゼロを目指して、生徒会役員が「学校見守り隊」となって校内巡回をしたりしている。学習面では、授業の内容がよくわかるという生徒の声を昨年72%から80%以上にするのが目標。毎週月曜の6時間目を、個別指導のための時間に充て、夏休みの補習にも力を入れる。

 学校経営品質活動に沿って弱点を洗い出す自己診断を一昨年、初めて試みた。その結果は、1000点満点で578点。企業で言えば「超優良企業」に該当する出来すぎの結果になり、学校が自己評価の甘さを認識するきっかけになった。

 診断は、「地域に開かれた学校作りを行っているか」「一人ひとりの学習者に応じたきめの細かい指導に取り組んでいるか」といった県の示した52項目について、教職員が討論をして評定を出す形式だ。個人ではなく、学校という組織の力量を診る。

 昨年からは、保護者や地域住民らによる学校関係者評価も実施。生徒の満足度などを示して、客観的な評価をしてもらっている。

 学校のチーム力をどう発揮できるか。学校経営品質の向上活動の主眼はそこにある。

(大垣裕、写真も)

 経営品質 「顧客本位」「独自の強みを伸ばす能力」「従業員重視」「社会貢献」の四つが基本理念。米国が1980年代に、産業の競争力強化を目指して「国家品質賞」を創設、財団法人社会経済生産性本部も1995年、これにならった日本経営品質賞を作った。三重県教委では、これらを参考に、「顧客」を「学習者」、「従業員」を「教職員」と読み替えるなど、学校経営になじむ形で、学校経営品質と位置づけている。

(2007年11月24日 読売新聞)