通勤電車で読む『友だち地獄』。

友だち地獄 (ちくま新書)

友だち地獄 (ちくま新書)

あとがきに、この本は「半分は自分語りの書」というふうに書いておられて、やっぱりそういうことだなあというか、それをいっちゃあおしまいよというか、そういうふうに思ったというのが感想で、なんていうか、新書向けにえらくおおばんぶるまいにあれこれのヤングキーワードをちりばめておられるし、いじめやKYやネット自殺からゴスロリや合コンや『恋空』や・・・までほとんどあらゆるナウキーワードが言及されているような気もするけれど、なんか全体の印象として、「優しい関係」というキーワードなどからしても、また、90年代末(っていうのも10年前ですが)のリストカット少女のウェブ日記(というのが10年前の風俗でしたね)と対比して『二十歳の原点』が参照されているのを見ても、なんか、フォーク&学生運動世代の人たちにニューミュージック&シラケ世代の人たちが批判されてるのを見るような感じがあった。そうすると、70年代後半(というのはだから、著者の世代)から00年代後半までの30年ほどの幅を持った若者論ということになって、それが世代論として成立するのかというのをことさらに論点にしようという人もいるかもしれないし、まぁそう思いもするのだけれど、でも、自分語りがより広い世界に直結しているという感覚は、いかにも若者論の本にふさわしいかんじがする。
難をいえば、現代の現象について、『AERA』を参照しつつ語るのはあまり趣味がよくないような気がします。

追記
はてなで本に言及すると、同じ本を読んでいた人の感想がいっきょに読めておもしろい。
で、いくつか、他の人の感想をみてみたら、まぁ、似たようなことを書いて、いわゆる「批判」みたいなことをしている人が結構いたので、追記
えーと、たぶん、弱点のある本ではあるのかな、と思って、それは↑上にも書いたけど、新書向けのサービスがじゃっかん、気前よかったせいで、全体の議論の焦点が甘くなったかしら、というあたりではあると思う。それはまぁそうなのだけれど、それはまぁ新書ってことでそうなってるってこともあるのだろうし、たとえば『AERA』の記事がちょこちょこ参照されていることも含め、甘いといえば甘いのだろうけれど、そこをとりあげて「批判」して終わり、という種類の本ではないのだろうなと思う。新書やし。
で、やはり、たとえば大学の教員として目の前の学生さんたちを見ていて感じる「感触」を、うまく言い当てている本ですよね、というのがあって、だから、この本をけっこう授業で学生さんたちに薦めてもいる。ここに書いてある分析とか世代の記述とかがぜんぶビシビシと当たっているかというと、焦点が甘いとは思うし、たとえばこの本で言い当てられている「感触」のある部分は何年も前からの若い人たち(自分も含め)から変わってなかったことでもあるだろうけれど、まぁそれはそれとして、目の前の学生さんたちを見てこの本をめくっていると、ついつい「わかるわかる」と言いたくなるし、だから学生さんたちが読んだら、意外と、それをきっかけに人間関係とか自分についてふりかえることにもなるかもしれんとも思う。同じはてなの感想文で、この本をすなおに面白かったといっている人は、たぶんそう読んでいるので、それはやはり正しい読み方だと思う。自分が学生さんたちに薦めているときにも、ようするにそういうふうに素直に読んでくれたらいいなあと思って薦めてるってところがある。
まぁなんていうか、意外とおんなじようなところで「批判」してる人が多かったのでねんのため追記