読んでた本。『日本の殺人』。すごくよかったけど学生に薦めにくい。

日本の殺人 (ちくま新書)

日本の殺人 (ちくま新書)

週末にテレビから逃げるように読んでいたのはこの本。学生に薦める新書を物色するシリーズで買っていたもの。著者は『安全神話崩壊のパラドックス』の法社会学の人。いい本だった。殺人にかんする統計データや資料をていねいに読んでいって、のっぺりとした数字にひとつひとつ顔をあたえていくような。漠然としたイメージやそこからくる誤解やその誤解に基づく意見なんかをていねいにくつがえしていくようなことをやっている。粘り強い作業であって、難解なところはない。冷静にかんがえて、殺人事件の多くは家族内で起こっているわけで、だから殺人というのを切り口に、家族について見ていくことができるともいえる。児童虐待は増えてるのか減ってるのか、増えてる、減ってる、としたらそれはどういうしくみでか、といったこととか。なので、たとえば家族論の授業なんかでは学生に紹介して薦めたいと思った。しかし、なにせ全篇殺人のはなしが続くので、ちゃんと読むのはしんどいし、あと、著者の手つきや物言いがときどき、リアリスティックっていうか割り切った物言いになるときがあって、そらそんなところやろうけど、と感じたところもある。なので読むならしっかりと読んで欲しい本で、学生諸君がタイトルにひかれて興味本位で手にとってちゃらっと読み流したりしてくれるようなことなら、読んでほしくないと思う。なので、課題図書のリストには入れないで置こうかなあと思った。
なんとなく本のテーマがテーマなのでちょっといまここに書くのに抵抗があった(ある)のだけれどさらっと書いとく。喪の作業のようなものとして読んでた。