- 作者: 市田良彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2010/09/18
- メディア: 単行本
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で、この本はしかし、そうして自己批判ばかりやっていうことがコロコロ変わってばかりいるアルチュセールのなかに一貫したものを見出そうとしているようだ。精神崩壊の結果とみえなくもない晩年の理論さえ、じつはボケたわけではなくてマルクス主義者としての情勢認識のうえで唱えられたものであり、しかもその理論的骨子はもっと元気な時期の思考の中で全部出揃っていたともいえるわけで・・・みたいな。
まぁしかし、それでけっきょく、ねじがぜんぶほどけたみたいな晩年の理論に行きつくんだったら、アルチュセールってなんだったの?っていうかんじになるのはたしかで、たとえば社会学でてきとうに「アルチュセールのイデオロギー論」なり「徴候論的読解」なりを引っ張ってきたいのであれば、それ以外の言ってることは無視して、自己批判は党の圧力に屈したってことにして、偶然性云々は狂気の結果ってことにして、なかったことにしてしまわないとつじつまが合わなくなってしまうではないか、という気もしなくはない。