通勤電車で読む『仕事をためこまない人になる5つの習慣』。妙に面白かった。

仕事をためこまない人になる5つの習慣

仕事をためこまない人になる5つの習慣

またまた通勤電車で読む佐々木本。青春出版、ときいてたじろぐわけだが、しかしこの本、じつは妙におもしろかった。
おすすめの野口式超整理押し出しファイルをやっていたら、封筒に入らない大判の資料が出てきたけれどどうしたらいいでしょうか?みたいな問い合わせがあるわけですね。メールとか実際に来るわけです。で、それに対して、ふざけんな、とは言わない。心理学用語でごまかすわけで、それを「メンタルモデル」と称する。仕事術を導入しようとしてもうまくできない人がいます。それは仕事術がわるいわけではない。仕事術は道具に過ぎないわけで、道具を使うための「メンタルモデル」が、使う側にできていないといけませんね、というわけ。たとえば、「トレイ」を使った書類整理術がある。野口式より簡便だからというのでトレイ式にするけどうまくいかない。野口式とトレイ式の違いは、簡便とかいうこと以外にあるじゃないか。トレイの中の書類は横向きで、しかも時間的に前のものが底に、後のものが表面に積みあがってる。野口式は書類をタテに置く。これが本質的な違いで、つまり野口式のキモは、すべての書類にアクセス可能・一覧検索可能であること、であり、トレイ式の難点は、時間的に前の、つまりたぶんより早く処理すべき書類ほどアクセス困難になるような仕組みになっているということで、そこんとこの違いがわかってないで表面上だけまねて失敗する人のことを、著者は、「メンタルモデルが心の中にインストールされていない」と言うわけである。
大事なのはキモの部分をわかって使うことで、キモのところがわかってれば応用が利く。封筒に入らなければ、たとえば資料本体は別のところに置いて置き場所メモを封筒に入れて管理する(とかなんとか、これはわたくしが思いついた例だけど)、自分に合ったやりかたは思いつくわけである。応用が利かなければうまくいかないわけで、それはなぜかというと、

実際の職場では、ほとんどのタスクが「例外的」な形で発生します。

というわけだから(この言い回しはうまいと思った)。
というわけで、この本は、「メンタルモデル」という言い方によってようするに、「おいおいふざけんなよそこから説明かよ・・・」というところを説明する。というので、心理学というより、仕組みのインターフェイスの設計思想の解説、というかんじ。こういう設計思想なんだから、わかって使えよ、と。
なんだけど、なんかこの本、著者のイライラが透けて見えるようで、たとえばメールの処理にかんする章では、「メールは”受信前”に整理しなさい」といいつつ、普通によくつかわれる迷惑メールフォルダ以外に、「準迷惑メールフォルダ」を作れ、と説く。不必要なメールは目にするだけでストレスなので気づかないうちに処理せよ、というわけ。たとえばたぶん、さっきの野口式の質問をした人なんかのメールは次回から「準迷惑メールフォルダ」行きかもしれないですね。また、メールの定型文をあらかじめ作っておく、の例としてあがっているのが

メールありがとうございます。

大変興味深いご企画ですが、
このたびは、辞退させてください。

お役に立てず恐縮です。

なのも味わい深い。よほどふだんイライラしているのだろうね。そしてこの返信を受け取った出版社や編集者の人のメールも、次回からは「準迷惑メールフォルダ」行きになるんじゃないかと思う。
というわけで、著者の人がバリバリと仕事をやっているというのはわかるけれど、たとえばこの本を読んで「メンタルモデルをインストール」して著者の周りの人が仕事ができるようになるかどうかという点については、なんだか著者の人はあきらめかげんなんじゃないかなあ・・・と感じられなくもない。
みたいなおもむきの深さもある本で、まぁおもしろかった。