「After3.11わたしたちの2年 ポップカルチャーに刻まれた3.11」『STUDIOVOICE』。

STUDIO VOICESTUDIO VOICE(スタジオ・ボイス)
STUDIO VOICESTUDIO VOICE(スタジオ・ボイス)

ポップカルチャーに刻まれた3.11【前編】
文=成馬零一
2013.03.11 14:46
 
東日本大震災から2年。その記憶を伝える、あるいは復興への手がかりを模索するための活動が様々な場面、ジャンルで行われてきた。
スタジオ・ボイスではきょう、この2年間を振り返るために、マンガ、アニメ、アイドル、テレビドラマなどいわゆる「ポップカルチャー」の領域で、クリエイターたちは3.11をいかに表現してきたかを、評論家の成馬零一氏に論じてもらうことにした。ジャーナリズムのような直接的表現をとらない娯楽/エンターテイメントの世界であるからこそ、作品の行間から伝わってくるメッセージは、時間の経緯とともに薄らいでいく私たちの意識を目覚めさせてくれたように思えるからだ。
それぞれの場所で表現を諦めない人々がいること、それはやがていくつもの種となり希望へと育っていくことを信じたい。

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2011年3月11日の東日本大震災から2年が経つ。テレビやネットでは追悼番組や、現在の福島の現状を伝えるニュース番組が多く放送され、再び震災関連の書籍も増えている。
この記事が掲載される今日も多くの記念番組が放送され、「あの日のことを忘れてはならない」というメッセージが強く打ち出されることだろうと思う。
本稿では、漫画、アニメ、映画、音楽、ドラマのクリエイターが3.11以降をどのような形で自分たちの表現に取り込んできたかについてまとめてある。
何故、この5ジャンルなのかは、単純に自分の守備範囲の限界で深い意味はない。また、上記のジャンルの中でもフォローできなかった作品もたくさんある。(例えば、大林宣彦監督の『この空の花』は未見なので言及していないが、重要な作品だと思っている)
今回、紹介する作品のほとんどは、突然、自分たちの日常の入り込んできた震災や放射能の衝撃を、いかに自分たちの中に取り込んでいったかの記録となっている。中にはうまく取り込めずに破綻しているようにみえる作品もあるが、その破綻も含めて自分にとっては大切な作品だ。