そういうわけで『皆殺しの天使』再見。ブニュエルっぽいブニュエル。

皆殺しの天使 [DVD]

皆殺しの天使 [DVD]

VHSから吸い出してブルーレイに焼きつつ再見。これはブニュエルっぽいブニュエルである。まずタイトルがキャッチーである。第二に内容が不条理でありかついかにもブニュエル的なブルジョワたちの自由と不自由の幻想をえがいている。第三として、タイトルと内容がさっぱり無関係である。じつにいい。内容としては、ある夜、ある屋敷でブルジョワたちがパーティーを開くところから始まる。パーティーはそれなりに盛り上がり、深夜に及ぶ。で、結局みなだれひとり帰らずにその部屋で夜を明かす。で、翌朝、誰となしにふと、誰も帰らなかったなどおかしいと言い出す。何人かが自分は早く帰宅せねば用件があるのだ、などと言いつつ、なんだかんだで部屋から出るには至らない。そのうち、なぜ誰もこの部屋を出ることができないのか、おかしい、と言い出すものが出てくるが、それに対して、まぁ落ち着けまずは理由を考えるべきだ、となだめる者が出てくるあたりからはなしがおかしくなってくるわけで、つまりブルジョワたちは気が付けばなぜか部屋に閉じ込められて出ていくことができなくなってしまうのである。閉じ込められた中で次第に本性を現していくブルジョワたち、しかし同時に、自棄になったり暴力的になったりしようとする者が現れれば同時にその暴力を戒めたり礼儀と秩序を保とうとする者が現れるわけで、いつまでたってもブルジョワたちは部屋から出ていくということができない。まぁ、くだらないといえばくだらない、真面目に寓意として見るにはばかばかしい、ギャグとして見るには不条理かつ不愉快な、いかにもブニュエル的な、メキシコ時代のブニュエルの到達点。