『ゼイリブ』みた。

ゼイリブ [DVD]

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  • ロディ・パイパー
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せっかく連休だったので、気散じでもということで、このまえテレビでやってた『ゼイリブ』を。ジョン・カーペンター。なんとなくタイトルの片仮名の字面から、派手にクリーチャーないしエイリアン的なものと戦うアクションホラー的なものを予想していたのだけれど、はじめからずっと、延々と、80年代の不況のアメリカで工場閉鎖で失業した主人公が都会で工事現場の日雇い労働者になり、貧困者むけの炊き出しキャンプに受け入れられるはなし。酷薄な資本主義と格差社会、そして、メディアによる洗脳と無批判化、体制による支配、貧困者たちの共生の場への警察による弾圧、というのが延々と描かれる。
でまぁ途中からレジスタンス的な気配が出てくるわけだけれど、不思議なサングラスをかけるとあらふしぎ、街中の看板や雑誌の言葉のばけのかわがはがれて「消費しろ」「考えるな」「眠っていろ」「権力に従え」みたいなシンプルで洗脳的なメッセージが現れてくる。で、金持ちやテレビに出ているタレントやキャスターたちの化けの皮がはがれて、なんか変なガイコツ星人みたいな姿が現れる。でまぁ、それなりにアクションホラー的なところも出てくるけれど、アクションというよりは、体制側の弾圧が圧倒的で一方的なんで、レジスタンスへの弾圧映画という気配。敵の顔がガイコツ星人であるかどうかとかはまぁ、おまけみたいなもので、街中で監視してレジスタンスをあぶりだし、圧倒的な物量でレジスタンスのアジトに攻撃をかけ、無慈悲にせん滅する、みたいな体制側の描かれ方というのは、顔がガイコツ星人であるかどうかに関係なく、そりゃこわいだろうと。

とまぁ、ようするにこれはアクションホラーのふりをした左派レジスタンス映画だよなあ、とまぁ納得していたのだけれど、Wikipediaによると、

ゼイリブ - Wikipedia
「誤解されるが、私は資本主義のこの国に満足している。ただ、批判が無さすぎるのは良くないというだけだ(2015年)」「ゼイリブはヤッピーと資本主義の暴走を描いたもので、世界を支配するユダヤ人を描いたものではない(2017年)」

という監督のコメントがあるらしい。とくに後者のコメントはなかなかなもので、なるほど、あのガイコツ星人を「世界を支配するユダヤ人」というふうに読む読み方が出てくるのは、なるほど、意表を突かれたが確かに出てくるかも。ようするにこの映画は陰謀論的な想像力をもとにしてるので、それでいえば「世界を支配するユダヤ人」というのは、なるほど出てくるだろう。また、そういうあれでいけば、人々の間に潜む邪悪な敵の恐怖、というのは、戦後の「赤狩り」の時代気分の中で宇宙人が共産主義者・スパイ・工作員・等々のメタファーだったこともあるわけだから、それでいえば『ゼイリブ』という映画を、世界を支配するサヨクの陰謀みたいな文脈で(そのばあい、この作品世界のトーンとなっている不況と格差社会は、資本主義の酷薄さではなくて、旧共産圏の経済停滞とノーメンクラトゥーラ的な文脈につながれて解読されることになるのかも)読む人も出てきたっておかしくないのかもしれん。なるほど世の中は広いなあ。