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で、さえないっていうか、いちおう天才的なギタリストってことになっているのだけれど、自称「ジャンゴ・ラインハルトいがいでは世界一」という、コンプレックスそのままみたいなやつで、だから、いくら上手に弾いているシーンでもニセモノ感がぬぐえないし、じっさいのはなし、大スターにもならないまま歴史から消えた(という設定の)しがないジャズマンなのである。だから、いくら天才ぶったり傲慢ぶったり性格破綻者ぶったりしても、しっかりいじましくウディ・アレンしてる。ま、それを見たくて見るので、結構なんであるけれど。
で、この男、ある日ビーチで、ことばの不自由な女の子をナンパして、その子が純粋無垢であるというキャラクター造形がいかにもウディ・アレン的な鈍感さで障害者差別的でもあるわけなのだけれどそのへんをうんぬんしてもしかたないのでそういうものだとして見ていると、たいへんに魅力的な女の子である。帽子をかぶって、いつももぐもぐとなにか食べていて、じっとこちらの目を見てときどき少し微笑む。ギターの音にいっしょうけんめい耳を傾けて、そのままかたまってしまう。で、まぁそういう天使みたいな女の子を、男は捨てていってしまうわけで、んで、二度とつかまえることはでけんのである。
がっくりとするギター弾きの姿を、ペーソスあふれるスイング・ジャズにのせて映していれば、しぜんとウディ・アレン節になってくるんで、ああウディ・アレン見た見たというまんぞく感があるわけである。
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ちなみに、ほんとのジャズマンのほんとの性格破綻者を見るんであれば、チェット・ベイカー本人の出演する『レッツ・ゲット・ロスト』が良くて、なにしろ、ほんとに嘘つきで女たちを騙し、借金をして、家族を捨てて、薬におぼれ、身体もぼろぼろになって顔も老人のように老け込んでしまい、そんでもモテモテでオープンカーにおねえちゃんを乗せて走り回り、トランペットや唄で周りをめろめろにしてしまう、という、その本人が出ているので間違いない。とにかくインタビューに対してもウソばっかし言っているので間違いない。
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