『想起のフィールド』読んだ。

想起のフィールド―現在のなかの過去

想起のフィールド―現在のなかの過去

某日、学校帰りの商店街の古本店で見かけて、佐々木と書いてあったので購入。論文集。「想起」という現象をめぐって。「想起」とは、「貯蔵されている過去」としての「記憶」の再現とは、別の現象である。そらそうやろ、と思うけれど、心理学にとってはそれは画期的な発想の転換であるようで。
まぁしかし、発想は転換したものの、それはまぁ発想が転換しただけってことでもあって、想起において過去はコンストラクトされているのだ、と言い直したところでそれ以上の何かが積極的に言えるかというとあやしい。パラダイムが違うのだという以上のことを言えてない論文もありそうだし、また、パラダイム転換に乗じてだましだまし怪しげなことを言ってしまっている論文もありそう。そして、心理学のこのジャンルは、「自白」研究という実用に供されるものらしく、この本も「自白研究会」なるものが母体となってるといえなくもないようだ。じっさいに裁判の鑑定書なんかもこのグループで出しているみたいなことが書いてあったり。足利事件について、無罪になるはるか前のこの本で批判的に言及してあったり。そういう実用的な次元でいうと、パラダイム転換しました以上の「何か」を積極的に言わないといけないという実用主義的圧力がかかるわけで、それに答えようとしていたという経緯があるわけで、そのへんがこの本にどう影響をしているのか、思いをはせつつ読むとおもしろいかも。