『セラピスト』読んだ。ノンフィクションというジャンルの本。

セラピスト

セラピスト

書評か何かで見かけて、おもしろそうなので読んだ。書評では、中井久夫河合隼雄という二人の名前があげられていて、まぁ重要な登場人物なのだけれど、もっとたくさんの人にインタビューして、日本のカウンセリングの歴史を描き出している。草創期のはなしとか、そういうことがあったのかと勉強になる。著者が中井久夫のところでちょっと描画をやってみるみたいなくだりがちょいちょい差し挟まれていて、中井家の猫がいいかんじで鳴くのがわるくない。ところで、カウンセリングについてはたくさん本が出ているし、そういうのを読んでもやはりおもしろいわけなのだけれど、それとこの本を読むのと、やはり印象が違う気がして、ではどういうぐあいに違うのだろう、というと、やはりこの本はノンフィクションというジャンルの本なんである。著者の人がこの本を書いた目的としては、たぶん、カウンセリングというものの本質を伝えたい、みたいなことがあるんだろうと思うけれど、ま、それなら世の中にカウンセリングの本そのものがたくさん出ているわけで、その気になればそういうのを読んだら直接的でいいような気もする。で、この本の読後感は、やはりノンフィクションというジャンルの本だなあ、というわけで、えーとたとえば、カウンセリングの本を直接手に取ろうとするような人に向けて書いているのではないように感じた。えーとつまりたとえばきょくたんにいうと、新幹線や飛行機で出張するときにビジネスマンの人が買って読むみたいなイメージっていうか。この本を読んでたとえばカウンセリングを受けたくなるとかカウンセラーを目指したくなるとかそういう感じがなぜかしなくて、たぶんそれならそういう人はカウンセリングの本を直接手に取るだろうし、たとえばこの本を読んだ人はこの本に書いてあるカウンセリングについての、思いのほか密度のある文章を読んで、ふーん、と感心するかもしれないけれど、なんていうのか、読み終わってぱたんと本を閉じたらそこまで、というかんじもするわけである。