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連想ついでに。ある世代の「離人症の光学」というのは、この映画で言えば(この映画に出てこなかった)爆撃機の視点をとるもの、といえばいいか。世界をすべて視野に入れて見透かす、それで自らは透明な存在であるような視点。でもって、しかし、そのような視点を取っていたはずの者が、あるとき地震の揺れの中にいる自分を、あるいは地上で爆撃にさらされて逃げまどっている自分を見つける、そこで「この世界の片隅」で死ぬことになる、それ以上でも以下でもない自分を見出す、みたいな。
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いやまぁ、しかしふつうにいえば、「この世界の片隅」というのは、ディテイル、ということかもしれず、つまりこの映画は、戦争がおこっているあいだにも主人公はささやかな日常を生きていましたよということを、ディテイルゆたかに描き出すものだよ、と。これはそれっぽいといえばそれっぽいし(たとえばNHKが「#あちこちのすずさん」などというハッシュタグでスペシャル番組をつくろうとしている等々)、そのささやかな日常を壊す「戦争」というのはいけない、みたいな言い方もできるのでぐあいがいいといえばぐあいがいい。まぁなによりこの映画はディテイルを見るものだよ、といわれればなるほどと思うし、一度見てもわからない、何度も見たらいつも新しい発見がでてくる、リピーター向けのというかこういっちゃみもふたもないけどおたく向けの映画でもあるかもしれない。まぁそれはそうだとして、しかしやはりそういう構図にしてしまって「戦争」はいけないみたいな言い方に持っていくのはやっぱりさすがに平板で他人事だろうからそっちにはいかないか。
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ささやかな日常を生きる主人公が、「運命」に出会う、と。すなわち「戦争」が、その「運命」である、と。ところがもうひとつの運命があって、それは「結婚」であるようにみえる。望んだわけでない「結婚」が、主人公の日々を根本的に変える。戦争は二番目にあらわれる運命である。ところが、この主人公の人は、「結婚」という運命を、あらためて自分で意志して選び直すよ、というおはなし。
ついでにいうと、
「戦争」という運命に対しては、主人公の人は終始、受動的にみえるのだけれど、いろいろな目に遭って、何度か感情的なリアクションを表す(①姪を無くして呆然としたり悔んだりする、②機銃掃射を受けた時に広島に帰ると言い出す、③玉音放送を聞いて慟哭する)のだけれど、そのクライマックスが③なのが不思議なかんじはある。まぁ、不思議な感じがあちこちにあって、それにはきっとわけがあるのだろうと思わせる映画ではある。