自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その14:6/28-)

緊急事態宣言は6/20に解除、でも感染者数は十分に下がっていたようにみえないし、むしろ解除の前からリバウンドの気配は観測されてたし、いよいよ明らかになっている。


変異株のほうは、デルタ株a.k.a.インド株のさらに変化形「デルタプラス」まで出てきたということで、それが日本にも入ってきているというのが悪いニュース。
こちら↓のスレッドも参照。
「ゴミを出した時に挨拶を交わしただけ。それも1ー2 m離れて、マスクをつけて」で感染、というのが恐ろしい限りではある。「Ct値」というのが化け物的に違うと。
ちなみに
「Ct値」というのの説明は、検索するといろいろ出てきて、まぁ専門的なことは置いといて、簡便には↓このぐらい。
PCR検査について (2021-01-18)|高橋皮ふ科医院

PCR検査は唾液や鼻腔や口腔内に存在するウィルス遺伝子断片の特定部位を取り出して、それを倍々に増幅(サイクル数と呼ぶ)してサイクル数からウィルス量を推定する検査です。
 このサイクル数をCt値と呼びますが、
・・・
日本ではCt値が40で陽性としていますが、台湾では35中国では37~40米国では40前後で運用されているようです。
・・・

というかんじ。
そもそもPCRというのは「ポリメラーゼ連鎖反応polymerase chain reaction」の略で、「DNAサンプルの特定領域を数百万〜数十億倍に増幅させる反応または技術」(Wikipedia)。なので、考え方としては、ウイルス量が倍になるとCt値が1減る、みたいなことだろう。Ct値が10減るとウイルス量は(2^10)倍になる、みたいなこと。なので、少し前までは日本ではCt値40で陽性と言っていて、Ct値25だとスーパースプレッダーだと言っていたのに、デルタ株ではCt値が10台みたいなのがぞろぞろ出てくるよ、というのが上↑のTweetスレッドの話。
以前、4月に、変異株では感染性が強くなったよ、という話が出た時、理由の一つとして、変異によってトゲトゲの部分が改良?されたから細胞に取り付きやすくなりました、という理解をしていた(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/04/10/134207)けれど、それと同じことの結果の側面なのか別のことなのかは素人目にはわからないけれど(変異の種類が別だから別のことのような気はするが)、このデルタ株で注目されてるのは「ウイルス量が多い」という面なのかな。

まぁ、良いニュースのほうもあって、
ワクチン接種のほうは、あちこちで「職域接種」が広がってて、自分の周辺にも聞こえてきた、というのはさしあたり良いニュース。

7/14.
春学期も最終盤に。そしてオリンピックは開催。そして東京ではまた緊急事態宣言。
通勤電車の中でマスクを外している人がちらほら見かけられる。危惧するのは、ワクチンを「1回」打っただけで(しかも直後なのに)すでに気を緩めている人が出てきているのではないかということ(自分の勤務地近辺のワクチン接種のぐあいからして、高齢者でない人で2回完了してる人って少ないのでは、でも1回ぐらいは打ったのかも、という推測)。ワクチンは、公式見解としては、2回打って半月後ぐらいに十分な免疫が得られれば、「発症」を抑えるよ、というのが最初に出てきて、それからたしか「感染もけっこう抑える」みたいな話だったように思うけれど、それにしても、たぶん「感染しない、させない」とまでは言えないはずで、だから、引き続きマスクもつけろよ行動も制限しろよ、ということだったかと思う。もちろんすべて今まで通りということではワクチンを打つ意味が感じられないでしょうという人情もわからんでもないのだが、それにしてもこの時期に通勤電車内みたいな閉空間でマスクを外して喋るというのは、緩みすぎじゃないの。なんか、危惧というか、勝手な想像なのだけれど、ほら、中学生のガキとかがわざと校則をちょっと破ったりしてイキるみたいなやつがいるのと同じように、「オレはマスクをしないぜ」みたいなイキりかたをしているあんちゃんとかおじさんとかがいるとしんどいなあと。
上↑に書いた通り、デルタ株というのは感染力が強い、きわめて強いとなっている。で、どのぐらい強いのかというのが、感覚としてわからないのだけれど、基本再生産数でいうと風疹レベルというのをどっかで見かけた。


www.nhk.or.jp
news.yahoo.co.jp
まぁ、完全に空気感染するものと、エアロゾル感染の範囲内であろうものとを直接比較するのもあれだろう等々あるかもなのだが、きびしいというのはたしかだろう。
また、このまえ良いニュースといっていたワクチンについて、ここにきてはしごを外したようにワクチン不足が言われているのは、これもいろいろないみできびしい。

7/15.
ワクチンについて。ワクチン不足によって、なかなか1回目を打つめどが立たないケースとともに、もう1回目を打っちゃったのに2回目の当てがなくなって焦るケースというのが出てくるけはい。で、基本的には1回目と2回目の間隔はファイザーだと3週間、モデルナだと4週間となっていて、それ以上の間隔をあけるのはどうですかとなったとき、よろしくないとされていた。でもまぁたぶん世界的にワクチンが足りてないこともあり?、WHOが間隔について8週までといってたのを12週と言い直した等々あるみたい。
こちらの↑先生は、
「接種間隔に関しては 一般的には間をあける方が良いことが多いです
間をあけるデメリットは、抗体産生よりも そのうちに感染しまうのを懸念してという考えです」
と。なるほど。

7/29.
わずか2週間でこの状況の変わりよう。
けっきょくオリンピックは始まり、感染は広がり、現在に至る。
西浦先生の記事。
www.buzzfeed.com
www.buzzfeed.com
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色々なことが書かれているので元記事は読むべしとして、
実効再生産数について、

東京の実効再生産数(※)は直近1週間で平均をとっても、1.41になっています。今までじわじわ増えているときは、1.1や1.2でしたが、1.4や1.5を超えるあたりからは急激な流行曲線になっています。

となっているわけだが、

5日ごとに1.5をかけていくぐらいのスピードで悪化しています。

というふうな言い方をすると分かりやすいですね。つまり、5日をひと世代として計算するわけで、まぁそれはそうなのだけれど、「指数関数的増加」というのが直感的に伝わる言い方はこうだな、と。
それでしかし、これは前からひっかかっていること(ここの「その9」の記事の2/27-28あたりにも書いてたこと)なのだけれど、

そして、実効再生産数は時が経つにつれ上がっています。

この理屈が直感的にわからない。もちろん、経験的にそうなっているのは重々わかるので、そのしくみをすっきりわかりたいというところ。基本再生産数はウイルスそのものの感染性の強さだとして、実行再生産数というのはじっさいに社会の中でどのぐらい感染しているか=感染力があるか、ということで、それは基本的にはその社会の人々の活動と接触の量の関数だと考える、というのが自分の理解なのだが、もしそれだけならなぜこの状況下で「時がたつにつれ上がっていく」のかが直感的に説明できないような気がする。じゃあほかにどういう要素があるかということで、感染の密度かなあ、とか思いつくのだけれど(感染者が増えることが実行再生産数にフィードバックされるしかけとして単純に考えて思いつくのは、「感染の密度が大きくなればそれだけ感染「力」も大きくなる?」だが…)、そんなことってあるかな…?

7/30.
ワクチンの効果について、「発症予防」の効果はあるとされていて、しかし「感染予防」の効果は、それなりにあるけれど確言できない、ワクチンを接種しても感染の可能性はあります、というぐらいが公式の答えだろう。
www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp
なんで「感染予防」効果は確言できないかということについて、厚生労働省サイト内にあるらしい去年秋の日付のpdfにいわく

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000680224.pdf
感染予防 接種した人が感染しない
〇 感染予防効果は実証しにくく、臨床試験で確認することは稀。
〇 発症しない感染者が多数存在する新型コロナでは、実証はほぼ不可能と考えられる。

つまり、調べられないからわからない、ということだけれど、これは医学とかの基準で言ってることなんで、もう少しゆるい基準で見たら言えることはあるということのよう。社会科学の習慣だともう少しゆるい基準でも十分に使える科学的な知見でしょうとなる。
国立感染症研究所がリリースしてるレポートのpdfだと思うけど、この7/15の日付のものがみつかった。あれこれあるけれどそのなかで、ワクチンの予防効果についての知見が蓄積してるよと言ってる。「後ろ向きのコホート研究」で報告が出てきているよと。
www.niid.go.jp

「新型コロナワクチンについて」( 2021 年 7 月 15 日現在 )
国立感染症研究
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/51/covid19_vaccine_20210721.pdf
ワクチンによる感染予防効果について
ワクチンの Covid-19 発症予防効果については、多くの臨床試験で明らかにされ、世界各国でワクチンの使用が開始されています。一方、症状は発現しないものの、SARS-CoV-2 に感染し、潜在的に周囲への感染力を有する状態(無症候性感染)に対するワクチンの有効性(vaccine effectiveness; VE)に関する知見も蓄積されてきました。
比較的早期にワクチンを導入したイスラエルからは、後ろ向きのコホート研究として、複数の報告がなされています。代表的なものとして、イスラエルの保険会社のデータや検査記録、ファイザー製のワクチン接種記録等を突合して解析を行った研究があります(1, 2)。これらの研究では、2020 年末頃から 2021 年 2 月にかけて、新たにワクチンを接種した者と非接種者を性別や年齢等の背景情報をマッチングさせ、VE を算出しています。結果、VE は接種から時間が経過する程、また1回目接種より2回目接種の方が高く、2 回目接種後 7 日以降経過してからの無症候性感染に対する VE は、Dagan らの報告 (1) では 90% (95%信頼区間[CI], 83-94%)、Zacay らの報告 (2) では 89% (95% CI, 82-94%) と推計されました。さらに、イスラエルからの後ろ向きコホート研究として、約 650 万人の 16 歳以上人口のうち、72.1%がファイザー製ワクチンを 2 回接種完了した段階(2021 年 4 月 3 日まで)の解析をイスラエル保健省等が行ったものがあります (3)。イスラエル国民の多くが参加したこの研究でも、2 回目接種後 7 日以降経過してからの無症候性感染に対する VE を 91.5%(95% CI, 90.7-92.2%)と高く報告しています。イスラエルの医療従事者を対象とした後ろ向きコホート研究では、ファイザー製ワクチンを、2 回目接種後 7 日以降の無症候性感染に対する発生比率を報告し、VE は 86%(95% CI, 69-93%)と推計されました (4)。
・・・
今までに紹介した研究は全て後ろ向きコホート研究でしたが、定期的な感染確認のためのサンプリングや、詳細な病歴聴取などを取り入れた前向きコホート研究として、最近、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control andPrevention; CDC)が、医療従事者を対象とした研究結果を報告しています。この報告によると、ファイザー製及びモデルナ製ワクチン 2 回目接種後 14 日以降の無症候性感染に対する VE は 91% (95% CI, 76-97%) と推計されました (6,7) 。この研究では、前向きコホート研究の強みを活かして、ワクチン接種後に SARS-CoV-2 に感染した場合のウイルスの排泄動態(毎週 PCR 実施)、症状の詳細が検討されています。その結果、2 回目接種後 14 日以降の SARS-CoV-2 感染者のウイルス量は、非接種者に比し40.2%(95% CI, 16.3-57.3%)少なく、ウイルス排泄期間は 6.2%(95% CI, 4.0-8.4%)短かったことが示されました。発熱が出現する割合は 58%低く(relative risk の 95%CI, 0.18-0.98)、症状が強く寝込む日は2.3 日(95%CI, 0.8-3.7 日)短いことが示されました。規定回数のワクチン接種を行っても防ぎえずに感染した(ブレークスルー感染)場合にも周囲へ排泄される総ウイルス量の低下
と、感染による症状の軽減を示唆しますが、本研究では感染性ウイルスの排泄については検討しておらず、さらなる検討が必要と述べられています。
長期入所介護施設におけるアストラゼネカ製及びファイザー製の効果を検証した興味深い前向きコホート研究が、最近、英国から報告されました (8)。これは、主に 1 回接種後の効果をみています。1 万人以上の長期入所介護施設に居住する研究参加者を、症状の有無にかかわらず、PCR 検査を毎月、アウトブレイク発生時は発生 7 日後、陽性結果後 90 日間は検査を行わない方針で SARS-CoV-2 感染のモニタリングがなされました。その結果、各ワクチン接種後 28-34 日の PCR 検査陽性に対する VE はアストラゼネカ製で 77%(95% CI,32-84%)、ファイザー製で 53%(95% CI, -6-80%)と推計されました。ワクチン接種後 28
日以降に陽性が確認された 107 検体中の平均 Ct 値は 31.3 (標準偏差 8.7)であり、ワクチン接種前に PCR 陽性が確認された 552 検体中の平均 Ct 値 26.6(標準偏差 6.6)に比して有意に高いことが示されました。Ct 値は、リアルタイム PCR 検査においてある一定の閾値に達するまで PCR 反応を反復するサイクル数を表現し、値が高いほどウイルス量が少ないことを意味します。本研究でも、ワクチン接種後感染において、ワクチン非接種の感染者より排泄ウイルス量が少ない可能性が示唆されたものの、周囲への感染力の評価については不明であることから、著者らは長期入所介護施設における非薬物療法的介入( nonpharmaceutical intervention; NPI ) を継続することが重要であると述べています。
・・・

ざーっと見ると、(これはデルタ株以前のデータということだろうけれど)9割前後、といったところで、そう聞くとけっこういいじゃないか、と感じるよなぁ。