通勤電車で読む『宗教から見た世界』。世界情勢を宗教という切り口からわかりやすく読み解く新書版のコラム集。学生さんに薦めたい。

毎年、専攻の学生さんたちにおすすめの新書本をリストにしてるんだが、せっかく宗教系の大学なので、学生さんたちが宗教というものについてきちんと理解できる入り口になるような新書本があったら薦めることにしている。で、同じ学部の宗教学科のクザーヌスがご専門の先生が本を出されたということで本屋さんに買いに行ったら新書版サイズの本で(新書シリーズの一冊というわけではないし値段的にも1100円と微妙に新書本価格帯ではないのでこれを新書本というかはわからないけれど)、『天理時報』に連載されていたコラムをまとめたものだった。一回分が2~3ページぐらいで、折々の世界の話題を宗教という切り口でわかりやすく読み解いていておもしろい(連載が2008年からということで、あとがきにあるように、アメリカの政権でいうとちょうどオバマ~トランプ~バイデン、という時期、この間、ヨーロッパでも、中東でも、アフリカでも、南アジアでも、いろんなことがあったし、日本ではもちろん東日本大震災があったし、現在は世界中が新型コロナのパンデミックに覆われてる)。「宗教リテラシー」とは、というコラムではじまる本書は、宗教という切り口で現代の世界を見るよ、宗教を理解することで世界が見えるよ、というわけだけれど、べつになんでもかんでもいわゆる宗教に結び付ける陰謀論みたいなおはなしにはならんわけで、いろいろな事象の根底に宗教的なものが伏在していることもあれば、ぎゃくに、見るからに宗教的な見かけをまとう事象が世俗的・政治経済的な動因から動いているということもあるし、とくにいわゆる宗教的とは言われていない事柄の中に、宗教的とよびうるような超越性への希求が見えかくれしてたり、などなど。なるほどそういうことなのだな、と思いながら読んだ。というわけで学生さんに薦めるの決定。