通勤電車で読んでた『本を売る技術』。たんに本好きというより本屋さんというシステムへの職業意識がすばらしいタイプの本好き。クール。

このまえ立ち寄ったかんじのいい本屋さん(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2024/03/18/212541)で買ったもう一冊。れいによってTwitterで見かけて面白そうだと思っていた本が売られていたので買ったわけである。本屋さん本というのは好きで特に一時期ちょいちょい買っていたけれど、ひさびさではある。著者の人は1980年に東京の芳林堂書店池袋本店ってとこから書店員人生をスタート、そこからパルコブックセンター新所沢店、吉祥寺店、渋谷店、そして合併統合によりリブロ池袋本店に異動、2015年閉店まで勤務、36年間売り場で本を売り続けた人、なのだそうだ。で、この本、正確にはインタビューというか聞き書きの形で書いてあるので、まぁ読みやすいし、タイトルそのままに技術論を語っているので、たぶんある種の書店員の人が読んだらとても勉強になるだろうな、という本で、しかし面白いので書店員じゃなくても面白く読める。
本の内容的には紹介記事↓があるわけだが
business.nikkei.com
www.tokyo-np.co.jp
読みながらなんとなく思っていていま著者の人の経歴を書き写しながら改めて思ったのは、「リブロ」っつったらTitleって本屋さんがもとリブロだとか(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20170520/p1)、『書店風雲録』『書店繁盛記』のひとがもとリブロだとか(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20160630/p1 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20160703/p1)、そうすると、イメージとしては「80年代ニューアカ」を仕掛けた「文脈棚」の本屋さん、みたいなのを思い出したり、あるいは他方では『書店繁盛記』で描かれたような、アマゾンの攻勢は激しい、取次がこちらの欲しい本を寄越さない、みたいなのを思い出したりしながら、うーむ、そういうのとイメージ違うんだよなあというのがこの本の印象。ひとつには、自分の好きな本への思い入れ、みたいなものに動かされてなくて、売れる本をきちんと売れる場所に置き、棚や棚下や平台に理にかなったやり方で本を並べ小まめに並べ直し、売れない本をきちんと見極めて返本し、お客さんにとって常に新鮮な本が並んでいるようにする、というのをきちんとやっていくことでよい本屋さんができる、という。たんに本好きというより本屋さんというシステムへの職業意識がすばらしいタイプの本好き、という印象。そうすると、なにか自分の考えやらセンスやらで棚を作って仕掛ける、とか、情熱を込めたPOPでその本の良さを客に伝える、みたいなのはあまりやらないと。むしろそういうのは、書店員の人自身が「棚に癒される」「POPに癒される」ほうが主じゃないかと(POPが立ってると後ろの本が見えなくなるからよくないとか)。そのへんはまぁしょうじき共感するところはあって、本屋さんが自分のセンスで棚を作りました!!みたいなのは、まぁとくに自ジャンル解釈違いみたいだったりするとけっこうイラっとしたりすることもままあるわけで、それよりは、いつ行ってもどこか新しい発見のある、回転のいい本屋さんのほうが好感が持てるってのはあるよなあと。あと、しかし、これも前に読んだような「アマゾンの攻勢は激しい、取次がこちらの欲しい本を寄越さない」状況というのがあんまり表立って語られてないわけで、そのあたりは気持ちよく読めるのだけれど、でもちょっとほんとかなあという気もしてくるし、いちどに何百冊入荷、平台に多面展開するには、みたいな話は今の全国の本屋さんの中ではごくごく限られた、東京とかの大規模店の勝ち組の方法論なのかもなあという気もしてくる。