『人情紙風船』『blue』みた。

人情紙風船 [DVD]

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blue [DVD]

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『blue』のほうは、まぁすごく定番な地方女子高生もので、地方都市の女子高はつまんない場所で授業は退屈で教師はものわかり悪くて、主人公の女の子は試験の時間にひとり窓の外をぼんやりと見ていて(なにしろ席がちょうど窓際なので)、みたいな、カット割りまで想像つきそうな&想像通りに進んでいく。いつも屋上でお昼を一緒に食べる同級生友だちたちとは仲良くしているようなのだけれど、やはりなにかちがって、そういうときに、学校帰りのバスの中で、クラスでは誰とも喋らない停学歴のある同級生の姿を見て惹かれる、みたいな。まぁそういうありがちな。本当に定番なシーンばかりでてくる。階段とか、鉄棒とか、屋上とか、海辺とか、商店街アーケードとか。
だけれど、主人公が市川実日子で同級生が小西真奈美で、ようするにこの二人がいいので、これはいい映画なんである。この二人が、おたがいに「桐島ぁ」とか「遠藤ぉ」とか呼び合っているというのは、すごく、らしくていい。
授業中に窓の外をぼんやりと見ている女子高生、市川実日子。いつもむっとしたようなむつかしいような顔をしていて、これしかない、という感じなんである。小西真奈美の部屋にはじめて行った時に、本棚にあるのがセザンヌ(やクレー)の画集で、あと、別マコミックスの『海の天辺』が並んでいて、まぁ、そのへんの造形も、らしいんである。
で、おはなしはいつのまにか、市川がセザンヌのような静物画を描き始めたりして、そういうつもりはなかったのになぜか、先日『美しき諍い女』を見たとき以来の読書傾向とシンクロしていてひとりで少し驚いたりするのだけれど、まぁだからどうだというほどの展開がそこであるわけではなくて、まぁ、さいごまで定番な地方女子高生ものの想定の範囲内で、市川と小西の存在感を、落ち着いた長回しでていねいに良質に撮っている。
エンディングの最後で、この原作が魚喃キリコだったのだと思い出す。なるほど、わるくないわけだ。魚喃の原作よりは映画のほうがこぎれいに作っているのに決まっているけれど、でも、映画の原作として魚喃を選んだ時点で、こういうかんじの、わるくない趣味の映画を作るだろうな、というわけなんである。