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だけれど、主人公が市川実日子で同級生が小西真奈美で、ようするにこの二人がいいので、これはいい映画なんである。この二人が、おたがいに「桐島ぁ」とか「遠藤ぉ」とか呼び合っているというのは、すごく、らしくていい。
授業中に窓の外をぼんやりと見ている女子高生、市川実日子。いつもむっとしたようなむつかしいような顔をしていて、これしかない、という感じなんである。小西真奈美の部屋にはじめて行った時に、本棚にあるのがセザンヌ(やクレー)の画集で、あと、別マコミックスの『海の天辺』が並んでいて、まぁ、そのへんの造形も、らしいんである。
で、おはなしはいつのまにか、市川がセザンヌのような静物画を描き始めたりして、そういうつもりはなかったのになぜか、先日『美しき諍い女』を見たとき以来の読書傾向とシンクロしていてひとりで少し驚いたりするのだけれど、まぁだからどうだというほどの展開がそこであるわけではなくて、まぁ、さいごまで定番な地方女子高生ものの想定の範囲内で、市川と小西の存在感を、落ち着いた長回しでていねいに良質に撮っている。
エンディングの最後で、この原作が魚喃キリコだったのだと思い出す。なるほど、わるくないわけだ。魚喃の原作よりは映画のほうがこぎれいに作っているのに決まっているけれど、でも、映画の原作として魚喃を選んだ時点で、こういうかんじの、わるくない趣味の映画を作るだろうな、というわけなんである。