再読してみてやはりいい。薬師院仁志「「会社人間」と現代メディア」有山・津金澤(編)『現代メディアを学ぶ人のために』。

思うところあって再読。

現代メディアを学ぶ人のために

現代メディアを学ぶ人のために

文章のサイズも限られていて、また、お題だけでなく内容にかかわるところまでかなりあらかじめの注文があったらしいなかで、ちゃんと面白いものを書いてるというのがさすがだし、元気付けられる。
冒頭のところなんか、簡潔で美しく、ぐっとくる。

出勤途中、駅のホームで携帯電話のベルが鳴る。電話機は、ベルを鳴らすと受話器をとるように人間を条件付けることに成功してきた。そして現在、電話回線のネットワークは、人間の身体をその端末として繋ぎ止めることに成功したのである。通勤電車では、電車の中に広告があるのか、広告版に乗せられて線路の上を走っているのかわからなくなる。そのなかで新聞や雑誌を読み、情報を仕入れる。駅を出ると、そこは看板や電光サインであふれ、ビルに看板がついているのか、広告塔の中に人間がいるのかわからなくなる。オフィス街では、ブランド商品を身に着けた若いサラリーマンたちとすれちがう。まるで彼ら自身が歩くファッション広告のようである。・・・

ここにはインターネットがでてこない。1995に発表された論文なので。「バブル崩壊」を見つつ、「バブルが崩壊したから消費社会論は終わった云々」などと軽薄なことをいいたげな風潮に逆らって、「湾岸戦争は起こらなかった」というボードリヤールのように、シミュレーション化された世界を描き出している。かっけえ。