『アメリカの影』。妹がツンデレな話、ではない。

アメリカの影 HDリマスター版 [DVD]

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なんの映画かというと、「ちょっとした人種問題さ」ってことなのだけれど、そういう社会問題を追及する的な映画ではなくて、なんでかというとこれ全篇即興(インプロビゼーション)で撮ったと称しているのである。まぁじっさいどの程度が即興なのかはわからんけれど、いわゆる社会問題を追及する的なことをするための、かっちりした構造的なやりかたではない方法論なわけではある。たぶん出発点に、「三人の黒人兄妹、真ン中の兄貴と下の妹は、ちょっと黒人に見えないかんじ、で、白人の男が妹をナンパするけれど長兄の顔を見てギョッとした顔をする、それで・・・」ぐらいの設定があって、それをふくらませていったということか。もちろんその最初の設定の中に「ちょっとした人種問題」が仕掛けられているのだけれど。
ていうか、ようわからんけれど、真ン中の兄貴は例えばギリシアとかそのへん系にも見えるわけで、長兄とのやりとりのなかにも、ふたりが直接血が繋がってないとおもわせるくだりもある、とするとふたりの兄同士は連れ子同士で妹はハーフ、ということかもしれない、このへんは字幕に出てないだけなのか、そのくらい常識的にわかることなんかもわからんけれど、ちょうど両親的な人たちが登場しない映画なのでわからんってのもある。
ていうかまぁ、若い監督が俳優仲間たちと撮った映画とすると、とうぜん親たちの役をする役者もいないし、きょうだい役といっても似てないのがあたりまえ、細かい設定を詮索するのは野暮、というのがそもそもの出発点ってこともある。そういう条件の下で「ちょっとした人種問題」をネタにしようというのが、ぎゃくに批評的といえなくもないかもしれんけれど、くりかえすように、べつに批評的かどうかはそんな関係ないかもしれんわけで、つまりいわゆる社会問題を追及する的な映画ではいずれにせよないのだと思う。
で、じゃぁおもしろかったかというと、「友だちで、仲間で、きょうだい」な三兄妹が親密なかんじが、よかった。落ち込んで寝起きの妹のベッドサイドに兄貴たちがやってきて気を遣ったり喧嘩したり仲直りしたりするシーンとか。