- 作者: 草間弥生
- 出版社/メーカー: 而立書房
- 発売日: 1994/05/01
- メディア: 単行本
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で、通勤電車の暇つぶしで読んでみたら、けっこう来ていておもしろかった、っていうか・・・まぁおもしろかった。なんていうか、小説といっても私小説のようなエッセイのようなものかなぁと思っていたら大間違いで、登場人物は蟻であるらしい。「蟻の精神病院」というのは、グリーン共和国のスクガー村にあるりっぱな櫟の木をくりぬいてできた、櫟精神病院と言う、蟻の精神病院のおはなし。語り手はアイリーンという芸術家であるらしい。で、その精神病院がろくでもないところで、有名でステータスの高い病院なので金持ちばかりが患者なのだけれど、医者たちは金の亡者で患者から付け届けや賄賂や贈り物をふんだくりまくっていて、しかもろくな治療をしないので患者はやたらと自殺する。等々。蟻の設定があるのかないのかよくわからないけれどときどき、思い出したようにやっぱり蟻の話だったんだというぶぶんもちらほらある。でもまぁ、大部分はろくでもない医者たちの生態と彼らへの悪口である。なんじゃそれは。そして、なによりこの小説の値打ちは、その異様な文章であって、ひとことでいうとですね、『うわさのベーコン』という小説がありましてそれに似ている。文章そのものが基盤から崩れている感じがして、えもいわれない不安感と滑稽さをただよわせている。それがなければたんなるグロテスクな寓話もどき、になってたような気がするのが、これはやはりおもしろいものを読んだような気になるわけで、この作家の他の小説も読んでみたい、と思わせるわけである。同時収録は「バイセクシャル」という、これまた唖然とするような短編。