通勤電車で読んでた『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』。IT業界のサグラダファミリアそのものの迷走については思ったほどは描かれてなかった。まぁな。

出るというときに気になってたが何やかんやで今読んだ。おもしろそうだと思って。みずほ銀行のシステムというと、IT方面ではながらく悪名高いというか、まさに「IT業界のサグラダファミリア」という呼び名そのものの、泥沼な開発状況だったというのを、なんとなく噂では目にしてたわけで、2019年7月、ついに完了したということでその内幕をレポートするのだというと読みたくなるわけである。でまぁ、そのわりには結論としては、サグラダファミリアの泥沼そのものについてはあまり何も言ってない。みずほのシステムは、結局、完成したわけで、完成品の説明をしているかぎりは、すごいなー、いいなー、過去にあったいろいろな問題が解決されたなー、というお話にならざるを得ない。まぁじっさいそうなのだろう。で、過去にみずほ銀行のシステムは2回、大きな大規模障害を起こしていて、その根本を辿ると、3行統合のさいのぐだぐだが根本にあるのだ、という筋書き。本書の構成は、だから、さいしょに現在の完成した統合システムの説明が来て、そこから時系列逆順にさかのぼっていく感じで、東日本大震災のおりの大規模障害と、さらにさかのぼって3行統合のさいの大規模障害を検証し、そのときどんな問題が起こっていてその原因は何かが明かされている。まぁそれはそれでおもしろいのだけれど、こっちとしてはなにしろ、「IT業界のサグラダファミリア」の迷走そのものを見たかったわけなので、そのへんはまぁあまり書かれてなかったかな。「苦労」は書かれていても「迷走」は書かれてなかった感じ。ていうか、せっかく完成したシステムにケチをつけるようなことはしないのだった。
そういえば、以前読んだ『プロジェクト迷走す: ビッグバン〈トーラス〉システムの悲劇』を読み直そうかなという気になったな。これ、じつは、訳したのが先輩や同級生なのだった。

今となっては悲しい思い出しかありません。いいこともたくさんやってきたはずです。それが一日で吹き飛んでしまうなんて

という惹句、いいでしょう、そういうのが読みたいわけですよ…