通勤電車で読んだ『スマイルズという会社を人類学する』。

著者の人は1988年に博士課程を満期退学した人ということなので、たぶんわたくしよりもちょっと上の世代かなあと思う。人類学の人ということで、いきなり、いまじゃフィールドワークを社会学者もやるようになったが社会学者はホームレスを研究するときに野宿者支援のNPOに加わって調査するが人類学者はホームレスになって研究するのだ、それが人類学者のフィールドワークなのだみたいなことをいったかとおもうと、でも本書では別にスマイルズという会社の社員になったわけでも社屋に住み込んだわけでもなくてインタビューをしただけのようなので、ではこの本は人類学と関係ない何か別のものなのかしらと思いつつ読み進めると、ポストモダンとかネットワークとかの話が出てきて、でもポストモダン思想は衰退してどうのこうのみたいなはなしになって、え、あれ、この本は思想の本なのかしら、人類学は?等々、うまくたどれなかったがようするにスマイルズはなんやかんやのいいところを合わせたような独特な会社なのだということだと思う。
で、スマイルズというのはスープストックトーキョーとかいうのを運営している会社で、その会社のひとたちにインタビューしたのがこの本。まぁ会社のことはよくわからないので、スマイルズという会社がいい会社なのかはちょっとわからない。
いっこまえに読んだ本の感想で考えたことが頭に残ってるので、まぁ、ちょっとセンスのいいスープのファストフードチェーン店が、センスの良さを付加価値分として、うまく成立するマーケットというのは、東京だから成立するんだろうなぁ、そのぶぶんでポストモダンだのアートだのなんだかんだ言っても、東京に、ということは地方からの収奪に、寄生してるんだよなあ、という黒い感想をもつわけである。まぁそういう感想は社会学であって人類学はそういうことは言いませんということになるかもしれんね。
なんか、学生さんが卒論でインタビューなんかするときに、テーマによっては、NPO代表とかそういう種類の人の話を聞きに行く事があって、じつはなかなかむつかしいんである。えーとつまり、なんか理念みたいなのを持って活動していて、しかもその理念をつねに言葉にして、まぁいってみれば講演とかで繰り返し語っていて、もう「いいお話」ができあがっちゃってるかんじのかた。それはやはり手ごわくて、学生さんは「いいお話」を一席きかされて感激して帰ってくることになりかねん。まぁそうすると、広報パンフレットとあまりちがわないような卒論になってしまうので、まぁ気をつけなはれやということをあらかじめよくよく吹き込んでから送り込むことにしている(けどやはり人間力の差ってものがあるのでどうしたっててごわいのだけど)。なんかちょっとそれに近い印象を覚えるが、やはり人類学はそうなのか。