で、この本、じっさいの企業の組織の事例を紹介するのではなくて、原理のところを書いているのがおもしろい。
本書に登場する例のほとんどは仮設例であり、基本的な組織設計の論理・原理原則を頭で理解するために理論的に単純化されたものである。その意味では、「成功している会社の事例を多数知りたい」と考えるような、組織の事情通を目指す人を読者に想定していない。
という言い方がいい。
組織のもっとも基本的な特徴は「分業」と「調整」である、というところからはじまって、じゃあまず分業にはどんな種類があるか、それぞれのメリット・デメリットはなにか、と進む。つぎに調整だけど、まずは事前にやっておく調整、つまり、標準化、が俎上に上げられる。つぎに、作業の処理プロセスの連動をどのようにデザインすると何が起こるか、が紹介される(たとえば処理能力の異なるいくつかの工程がくみあわさると、処理能力の一番ひくい工程がボトルネックになる。じゃあぜんぶの工程の処理能力をピタッと合わせておくと無駄がないかというと、外部環境の変動なんかの不確定要素に対して弱くなる。後工程の処理量は前工程からの処理可能な仕掛け品量によって制限されるわけだから、あとに行くにつれてバッファを見て置くといいのか。でもバッファを積みすぎると冗長になる。で、バッチのサイズを小さくすることで変化に対応しやすくする。どうのこうの。で、リーンだのなんだのという話も出てくる)。で、しかし、組織というのはルーティンだけを回せばいいということではなくて、不確定要素に対する判断処理をする仕組みがひつようだ。そのためにヒエラルキーというのが機能する。事前に標準化できないことについての事後的調整手段として、組織にヒエラルキーがあって、それぞれの部分のトップに判断の権限を持つ人がいて、なんかあったらその人が判断する、としておけば、不確定要素をスムーズに処理できる。では組織のヒエラルキーはどのようにデザインするか。たとえば「管理の幅」という概念。一人の長が何人の部下を持つか。単純に言えば、ある組織の管理の幅が決まれば、組織のメンバー数によって自動的に組織の階層数は決まることになる。でも、管理の幅というのは不確定要素がどのぐらいあって標準化がどのくらいできて、みたいなことによって左右される。じゃあどんな組織にはどんなヒエラルキーが必要か。等々。
でまぁ、こういう原理的なところのテキストをみて、また例によって自分の職場のことを考えつつなのだが、どのように理解できるかを考えつつ読むわけである。