通勤電車で読む『私の臨床精神医学』。九州大学の精神科のOBの先生方の講演録。多士済々で面白い。

行動療法の山上先生の関連で( https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2023/06/12/231748 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2023/06/14/212850 )。面白かった。この本は、九州大学の精神科の研究室のOBの先生方を呼んで講演をやってもらったのをまとめて本にしたよ、ということのよう。で、いろんな専門の先生がいるわけで、森田療法や行動療法や精神分析、あるいは薬をどのように出すとか、マズロー理論と臨床とか、脳神経の研究とか、子どもや高齢者、発達障害やうつや認知症、まぁいろいろ、作家の人もいたりして、多士済々でおもしろい。基本が精神科の臨床で、軸足が共通しているので、表面上の理論や方法がちがっても質疑なんかで話が噛みあったりしてるところが面白い。で、山上先生のおはなしはたぶん『方法としての行動療法』にも出てきたケースで、あるていどくわしく紹介されるとやはりしんどそうなところをうまくやっておられてすごいなあというかんじなのだけれど、自分的にけっこうぐっときたのは神田橋先生という、なぜか2回しゃべっておられる、たぶん喋りが上手い方なのだろうなとも思うのだけれど、とくにそのうちの1本目のおはなしがぐっときた。精神科外来でいわゆる「三分間診療」みたいな枠組みで一日に5-60人の患者さんを見ながら、さくっと診てぱっと判断して適切な薬をぱっとだして、うまいこと患者さんを安定させる、という。わたくしそういうのが好きで、わたくしのフェイバリットである『症例研究・寂しい女』の山中先生がやはりそんな感じ(山中先生はまぁ、薬もだけど夢とかでやってて、夢とかやるときには3分ではないのだろうけれどでも外来のケースだった)だと感じた。どろどろと深く探求して根本的にどうこうする、みたいなことをはじめると患者さんもそれなりにたいへんなわけで、それをすべての患者さんがいま求めてるわけでもないわけで、とりあえずこの患者さんはいまこのへんでしんどい思いをしていて、このへんをさくっとフォローしたらずいぶん安定してさくっと日常を取り戻す道筋が見えてくるな、というあたりをぱっと見極めて、薬でもカウンセリングでも、さくっと切り上げてうまくいく、というのが、いいなあと思うわけである。ぱっと患者さんに会った時の見立ての切れ味とか、いろいろな病気やら障害にかんする基本的な把握の正確さとか、処置の思い切りの良さとか。