『心を病んだ父、神さまを信じる母』読んだ。エッセイマンガで読む精神疾患とか信仰とか。

何か他の本を検索か何かしていた時にふと見かけたかなにかで読んでみた。エッセイマンガなのでさらっと読める。統合失調症とか精神疾患とかの経験をマンガやエッセイにしたやつというか当事者による自己記述というかはなんかいろいろ読んでて(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2023/10/04/125916)、ある種のわかりやすさがある。で、この本はタイトルの通り、父親が統合失調症で母親が信仰を持っているという家族の、子どものたちばの目線で描いている(なのでまぁ厳密に自己記述ということではないですな)。で、タイトルを見ると母親の信仰というのもなにかカルト宗教みたいなかんじで描かれるのかしら、いまはやりの宗教二世問題みたいな切り口なのかしら(『カルト村で生まれました』というのもあったねhttps://k-i-t.hatenablog.com/entry/20160429/p1)、という予断で読んだところ、そういうかんじでとりあげてるわけではなかった。たぶんそれなりに「ふつう」のキリスト教で、留学ホームステイを機に結婚前からキリスト教の信仰を持った母親は、結婚してから統合失調症を発症した夫に向き合う苦労とか生活の苦労とか家族を支える苦労とかあったにもかかわらず、信仰を支えにした強さがあって明るく社交的で前向きだよ、でまぁいろいろあっていまでもいろいろあるにせようまくいくところもあるよね、という湯加減(キリスト教の信仰による強さってことでは『愛をばらまけ 大阪・西成、けったいな牧師とその信徒たち』ってのがすばらしいhttps://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/01/19/135145)。精神疾患に対する、あるいは信仰に対する解像度がすごく高いというわけではないけれど、子どもの目線、ぐらいの距離感でいいかんじにえがいているし、タイトルだけ見た時のおどろおどろしいイメージとはちがって、精神疾患は治療と生活によって軽快しうるもののようにも描かれるし、信仰のほうも、たしかにある種の宗教的な手触りを残しながらちゃんと理解可能な描き方になっているように見えて、スッキリ読める。

通勤電車で読んでた『食通小説の記号学』。

買って以来幾星霜、もう本棚の一部かなというぐらいに溶け込んでいたものにふと目が行って ー それは目の前に並んでいたわけで ー 手に取って通勤電車で読んだ。食通小説なり食べ物エッセイなりというのは昔よく読んでいて、まぁ明治以降のそういう食通文学をあれこれとりあげて論じている。記号学、というけれどまぁ記号学記号学しているわけでもなくて、まぁ食べ物の味について文章で書いてもそれは味そのものではないわけで、しかし文章で表された味の質が文学の質として機能するんだから味とは文学のメタファーだよねみたいなことと、あと、あれこれの書き手や作品に登場する食味がどのようなコノテーションを持っているかみたいなことだとおもう。

『ELAN入門』読んだ。

マックス・プランク心理言語学研究所で開発された「ELAN」というフリーソフトがあって(https://archive.mpi.nl/tla/elan)、言語学や相互行為分析やいろいろな研究に使える、映像音声ファイルを細かく見て細かくコーディングしたり注釈などを書き込めるというのがあって、その入門書。
著者の人によるサポートページ↓
12kai.com
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自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その31:4/5-)

さて、年度も変わったのでページを変えた。現状は、NHKのページでみると本日発表のデータがこんなかんじ。
おおよそ11月末ぐらいからはじまった「第10波」がおおよそ2月半ばぐらいにピークを迎えて3月末にかけて終息しつつあるよ、ぐらいのゆかげんかしら。
新型コロナウイルス 都道府県別の感染者数・感染者マップ・「定点把握」の感染状況データ|NHK特設サイト

グラフの感じだけ見れば、もう少し下がってくれることを期待するけれど、しかし下げ止まりの「底」の高さを見ると、流行の波を重ねるごとにだんだん底が高くなってるように見えるのもたしか。ちなみに新年度がはじまって学生さんがまた大学に来るようになったけれど、コロナになって欠席の者はやはりいるね。インフルもいるしなんかわからんけど高熱というのもいる。まぁ、人口あたりの感染者数から雑に計算したら、身の回りにふつうに感染者がいるというのはふしぎではない。ざっと人口10万人当たり100人のオーダーだと、1000人に1人ということになるから、学生さんが3000人いたら3人ということになる。それでそもそも現在の捕捉率をどのぐらいに見積もるかとして、仮に1割だけ捕捉してる(9割を見逃してる)とすればその数字を10倍することになるし、まぁそれよりは捕捉してるだろうと考えればそこまでの倍率は考えないで良いとする。でまぁもちろんインフルというのがあり、また先月の話題でいえば麻疹はどうなんだ(これもNHKのサイトで見れる、基本的に全国で数人というレベルなのでさしあたり過度にびびる必要はなしとする)など、いやしかし21世紀というのがこれだけ感染症の心配が生活に影響を与える時代になるとは昔は思わなかったですな。

4/7.
れいによって札幌医科大の研究室サイトから現時点の数字を。
【都道府県別】人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推定値
全国平均は160.0。奈良は273.8人で全国3位。兵庫は260.0人。東京157.5人。大阪117.0人。京都146.3人。ちなみに鳥取は214.7人。島根は115.6人。

通勤電車で読む『宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ』『宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ 検定の巻』『宇宙怪人しまりす統計よりも重要なことを学ぶ』。

れいによってTwitterで見かけて読んでみた。宇宙の征服をもくろむりすりす星の宇宙怪人しまりすが、地球の医療統計の先生に統計を学ぶ、という対話篇形式の本。基本的には統計入門で、むずかしい数式を出さないよというタイプのやつ。地球のかぜぐすりヨクナールが効くかどうか調べる、みたいな例をつかいながら、平たく説明している。3巻目では、「統計的に有意」とは、みたいなはなしが出てくる。「ASA声明」(https://www.biometrics.gr.jp/news/all/ASA.pdf)とか。www.jstage.jst.go.jp
それはそれとして、
この本のいいところはしまりすのイラストだと思うのだけれど、なぜかある章の扉絵で、プリンス仕様のギターを弾いているカットが入っている。
それはそれとして、このシリーズが好評に付き、中外製薬YouTubeチャンネルで動画になっているようだ。全6回。
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近所の久々に行った書店で買った『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』。

三月某日、さる用件のため出かける。近所だったけれど雨だったので電車で。それでちょうどその少し前に、Google地図で近所の本屋さんをあらためて探していたのは、散歩のたびにいろいろな店が閉店になっているのを見つけては悲しくなってしまうからで、それでいまけっきょく近所はどうなっているのかと。それでGoogle地図だと書店じゃない店が書店で登録されたりしてるようなものあり、けっきょく様子がわからなかったのだけれど、なんとなく近くの駅に書店を発見した。そこで、そんなところに新しくエキナカ書店でもできたのかしらと思っていたのだけれど、さてそういうわけで雨の日に電車で出かけてちょうどその駅で降りることになったので、そうそう、書店を偵察してみるべし、ついでにそこのパン屋さんでおいしいサンドイッチを買って帰るべし、と算段する。で、駅に降り立って構内を歩いたら、驚くべきことに書店はあり、驚くべきことにそれはずっとずっと昔からそこにあって昔はよく立ち寄っていた本屋さんなのだった。いまの下宿に越してきてから足が遠のいていた(たぶん5年前に買った『バカロレア幸福論』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2019/08/27/201546)をこの店で買ったような覚えがある)とはいえ、すっかり忘れていたことにちょっと驚いたものである。それで久々に店に入って、ちょっと懐かしく棚を眺めて、探していた本はなく、しかし久しぶりの店なのでちょっと何か買おうかしらと、文庫の棚の、食べ物エッセイが並んでいる中から一冊をレジに持って行った。それで店を出るときに自動扉に閉店のお知らせの紙が貼ってあって固まってしまったわけである。
小説家の角田光代とその夫の河野ってひと(ミュージシャンらしい)が、飲み屋さんに行って、それで同じ店のことをそれぞれが短いエッセイにする、という雑誌の連載かなにかを本にしたもの。楽しく飲んで食べて、そして夫婦でおんなじようなかんじでおんなじようなことを書いているので、まぁそういうのが楽しそうだなあと思うわけである。連載はコロナ禍前のことで、だからときどきエッセイの末尾に店の動静(閉店したとか移転したとか)が小さな字で書いてあると、たいへんだったのかなと思うこともある。しかしやはり東京というところにはたくさんの店があって、行きつけの店をつくったり新しい店をみつけたりで毎日楽しく幸せに暮らしていくことがあたりまえにできるところなのだなあという感想も持ったわけである。